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「とにかくほんまに確かなんは、刀抜かんと…」

たとえそれが仲間であっても、

「死ぬゆうことや」

油断してはいけないのだ。



夜の森に響き渡る拳西だったものの雄叫び。
当たりには人っ子一人いない。流魂街ならば誰かしらいるであろうに、その姿も気配も感じない。
夜は怖いものが出るから外に出てはいけないよって、とても小さいころに教えてくれたのは誰だっけ。そうだ、目の前にいる拳西がそう教えてくれたんだ。夜がさみしいなら一緒に寝てあげるって私の手を白が引いて、その少し前を歩いていた拳西がめんどくさそうに私にそう言い聞かせてくれたのだ。
でも、もし怖いものが出たとしても拳西がぶっ飛ばしてくれるから大丈夫って、私は笑ったんだ。

「なまえ!!!隠れとれ!!!」
「っでも!!!」
「こんなんお前の手にはおえん!!言いから言うこと聞けや!!!」

真子が切羽詰った顔で怒鳴るように私に命令する。
皆勢いよく拳西から一歩跳び退く。
すると拳西は虚特有の歩兵法である響転(ソニード)でラブの後ろに回り込む。後ろから勢いよく鋼皮(イエロ)となった拳で殴りつける。ただでさえ筋肉ムッキムキの拳西の拳にイエロが加わってタダで済むはずない。けれどそこはさすが隊長格なようで、死覇装の上を半分以上失っているけれどラブは無事だった。


「俺らが止めなあかんねん」

仲間だから。大事な大事な仲間で友人だから。

「あいつが拳西なら、尚更のォ」

そういってひよ里に言い聞かせる真子。それに続くようにリサとローズも同意して、そのまま拳西へと向かっていく。

この風景を見るのは二回目だ。
でもこんな物、二回も見るもんじゃない。
じくじくと心が締め付けられるように苦しい。ローズとリサが刀を抜いた、切りかかる相手はもちろん拳西だ。
内在闘争の時と虚化持続時間の時に皆でいっぱい修行して、もちろん抜き身の刀で本気で戦ったけれど、そこに皆殺気なんてものはほとんどなかった。全ては仲間のために刀を振るっていたこの前までとは違う。

本当に拳西を傷つけるつもりで、みんな刀を抜くのだ。
破裂してしまいそうに痛い。


ローズが勢いよく地面に叩き付けられた。
その目の前でまたラブが拳西に向かっていく。

「やっぱり見てる事なんてできないよお!!!!!」

私の腰に刺さっている斬魄刀は飾りではない。みんなを助けるために、この子を連れてきたのだから。
今やらなきゃ、いつやるのだ。

「白!!」
「なまえ!!!!お前さがっとれって言うたやろ!!!!」
「うるさい!!!真子のドアホ!!!!」

お願い、私を助けて。

「卍解」

力を貸して、私の友達。






その後慢心相違になりながら、なんとか白の猛攻を防いだ。
やっと追いついたハッチが詠唱破棄で次々と二人を縛道で封じていく。

「お前、いつの間に…」
「えへへーだから言ったじゃん…真子のバーカ」

虚化なしで虚化してる白を防ぐのは結構疲れたみたいで、疲労困憊な私は無様に地面に寝転がる。そんな私にひよ里を小脇に抱えたまま真子が私を見下ろす。
ああ、月が綺麗な夜だなぁと思った。
抱えられたひよ里の目がだんだん濁っていくのが見えて、ゆっくりと目を閉じた。

ゴポォッ、という音が聞こえた。
その後ひよ里だった物が、夜の闇を引き裂くように吠えた。


ねぇ、みんな聞こえる?
世界が私たちを裏切った遠吠え。悪魔の足音。止まらない振り子の音。
私にはよく聞こえる。とてもとても、耳触りだ。



「……藍、染………!!」



そして今から語られるものが、本当の真実。
かちゃりと、右手に握った斬魄刀の柄をもう一度強く握りなおした。

貶められた過去を、この手で切り裂くために。


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