02
自他共に認める潔癖症として有名な俺を汚いと称した女に、その時確実に自分は高揚していた。

汚いと言い終わる前に、手が出た。その汚い男の手自ら汚されていく様は中々に見物だった。この姿を見ているのはこの空間に俺一人だけと感じると気分は更に高まった。

女の名前はなまえといった。
直属の部下ではなく、ただいつもなんとなく近くに控えているため雑用を任せる為顔と名前程度は覚えていた。報告書によると巨人討伐数は新兵にしては中々の成績で今後が楽しみだと確か以前エルヴィンが言っていたが、俺はそれはどうでもよかった。
この女の価値は巨人討伐ではなく、その潔癖症だった。
他人よりも過剰とも言える自身の潔癖症。部屋に埃が積もると気になっては近くにいた部下立に掃除をさせては、その汚さに何度やり直しを命じた事か。しかしなまえという女は毎度完璧に掃除を終わらせてくる。それも迅速に丁寧に、しかし塵すら残さず完璧に掃除をするためとても重宝していた。
故に部下ではないが近くに置いた。近くにいれば常に周囲は清潔を保てた。埃如きにイライラする必要もなくなった。
僅かながらも常に張りつめていた精神が、なまえがいれば若干和らいだのだ。

しかしそのなまえが全身を震わせて拒絶の言葉を口にした。
人に興味がなく人と接することを拒む様は常々人形のようだと思っていたが、始めてみた人間らしい感情をあらわにした様子を見て、何故か高揚したのだ。
何故かはわからない。それはただ性癖としか言いようがないのかもしれない。
拒絶と嫌悪を示すこの表情をもっと見たかった。この人形が初めて表した感情をもっと見ていたかった。

そう思ったら自然と手が出ていた。
求めるように手を伸ばした。



一通り殴り終えた後、これ見よがしに懐からナイフを取り出した。
しかし、月明かりに怪しく照らされる刃先を見てもそれに恐怖することはなかった。ただ向けられるのは性を吐きだしてきた男に対する嫌悪と拒絶だった。

「お前が汚いと嫌悪する男に嬲られた感想はどうだ?」
「……いえ、殴られても仕方のない失言をしたのでこれは当然かと…」
「泣け、なまえよ。つまんねぇだろうが。」
「あえて泣くとしたら汚い手で私に触らないでください。」

どこまでも嫌悪なまえし続けるなまえをひたすら汚したかった。
手に持ったナイフを弄ぶのにも飽き、なんとなく指の間をくすぐっていたなまえの髪を一房わしずかみ切り裂いた。
途端草むらに落ちる切り落とされた自身の髪には目もくれず、自身の髪だったものを握る汚らわしい手を凝視していた。

「なにしてるんですか?兵長?」
「汚いと嫌悪する男に髪を弄ばれる気分はどうだ?なまえ」
「…あまり、よくないです。」

口、つけないでください。気持ち悪い。そう言って手の中にある自身の髪だったものを奪い取ろうとする。
その髪を草むらに投げ捨て、なまえの頭を鷲掴みにする。強制的に顔をあげさせその髪ごと頭皮に噛みついた。

綺麗で潔癖症な女を汚す快感を、その夜リヴァイは知ったのだ。
そして汚される嫌悪感を、その夜なまえは再び実感したのだった。


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bkm
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