19
怒りでも、悲しみでも、もちろん高揚している訳でもない。
ただ、ただ、何も写さない眼が見下ろす。
何も感じていない表情が、無惨に突き刺さってズタズタと心臓を切り裂く。

「いや!やだぁ!!」
「……」
「やだっ…離して!!兵長やだぁ…っ!!!」

夜を切り裂く悲鳴をあげても、それを聞き入れる事はなく。
抵抗しようと手を伸ばそうとも、片手で両の手を封じられる。慣れた手つきで両手を縛り上げベッドに固定される。
どんなに涙を流しても、どんなに叫んでも、助けてくれる者なんていない。

母も、こんな感じだったのか。

錯乱する私と正反対に、脳の思考はやけに冷静で、そういえば私はこんな風にされて出来た子供なのだと今ここで再認識させられた。



両手を頭上で固定され、無理矢理押し倒されたベッドの上で必死の抵抗を試みるも、人類最強に勝てる人間などこの世にはいない。
いとも簡単に、まるで赤子の手を捻るように抵抗する事すら無駄だとでもいうように、組み敷かれる。

「…んっ、…ッ!!」
「……は、なまえ…」

顎を掴まれ強引に荒々しい口付けを降らせる。何度も何度も息を食べるように深く、口内を貪りしゃぶる。最後に仕上げとばかりに唇の端を噛まれ滲む血をべろりと舐め上げる。
口付けの最中どんなに身体を震わせ足と手が快感に震えても、それを抑え込むリヴァイの手がピクリとも動くことはなかった。
圧倒的な力の差。それが意味することは、ただこのまま大人しく、体の奥の奥まで目の前の男に汚されることを意味していた。
それに名をつけるなら絶望。
これは蹂躙で、そこに愛はない。

「いや…、やめて…」
「なまえ…なまえ…、」
「やめて…そんな声で、私を呼ばないで…っ、」

愛が無いなら名前をよばないで。どんなに懇願してもリヴァイは名前を呼ぶことをやめなかった。
うわ言のようにひたすらなまえを呼び続け、それでも制止の懇願には耳も貸さずに行為を進めていく。
首をねっとりと愛撫されながら、ついにシャツのボタンに手をかけられる。肌蹴た所から外気が肌を厭らしく撫でる。どんなに心が嫌がっても、高ぶる熱は身体を熱くさせる。
胸の下着をずりあげられる感覚に、ついに現実から目を背けたくて目を閉じる。固く固く、もう二度と開かないように。それなのに閉じたはずの眼からはボロボロと涙がとめどなく溢れ、零れ、枕を濡らしていく。

「やめて…やだ、」

リヴァイの舌がぬるり、と、触れた。

「もう、わたしに、さわんないでよぉ…っ!!!」



ドスリ。耳のすぐ近くで鈍い音がした。
目を開けるとフワリ、と真綿が飛んでいた。

「言ったはずだ、なまえ。」

見上げた顔は確かに怒りの色をあらわにしていた。先ほどまでの無表情な顔ではなく、怒りと憎しみと裏切りと絶望と、それを強く投影した双眸に見下ろされていた。
ざわり、と背筋が凍る。
視界の端で鈍く光るそれは、いつぞや私の髪を切り刻んだそれだろうか。
なまえ。そう抑揚のない声で再び呼ばれる。

「拒むな、受け入れろ。痛いのは嫌だろう?」

そう宣言し、口元を歪めさせる。
いつもと違う、それは嬉しそうというにはあまりにも邪悪で禍々しい笑みだった。

拒否の言葉を口にするたび牙を立てられ、拒絶の意思を示す度、皮膚を食いちぎられた。
数分もたてばなまえの身体は僅かな血と醜くつけられた噛み後と汗と唾液で、それはそれは汚く穢された。

「兵長…もう、」
「まだだ…ほら、ここには何もしていないだろ。」

胸に置かれた手がヘソをなぞり、そして誰も触れた事のないそこに、ゆっくりと手を這わせる。
布一枚隔てたそこを何度か指を往復させれば、そこは予想に反し全く濡れていなかった。
もう何度も噛まれて赤くなってしまった首元に舌を這わせれば汗と血交じりの味がした。どちらもなまえの体液ならと、普段の潔癖症からは想像もつかないほど傷口を丹念に舐め、そして抉っていく。



途方もつかない時間痛みと快楽を与え続け、そしてゆっくり壊れていけばいいとリヴァイは思った。そうすれば、なまえは拒否の言葉など言わなくなる。以前もそうだ。痛みが嫌だと懇願したなまえが、きっと顔を出すに違いない。
たった一日だけ離れてしまってなまえは変わってしまったのだ。それならもう二度と離れる事の無い様この部屋に永遠に閉じ込めてしまおう。
狂った思考を巡らせながら腰のあたりに噛みつく。腰の骨など全て砕ければ、もう二度と立って歩くことも逃げる事もできないだろう。そう考えながら強く優しく牙を剥く。
何度目かの肉を食いちぎられる感覚に、なまえはまた悲鳴をあげた。


prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -