「いい加減、返事をくれないんですか?」
国際犯罪者番号、怪盗1412号通称怪盗キッドのにこやかな笑みを向けられている名字名前。
事の発端はつい2ヶ月前、怪盗キッドが鈴木財閥の大きい宝石がついた指輪を盗むと予告状が出されて興味本意で会ってみたかった名前は同級生の鈴木園子に捜査に協力したいとお願いしたところ、あっさり許可を貰った。
警察やあの名探偵毛利小五郎にも捕まえられない怪盗とはどんな奴なのか、現場にいって観察してみたらあら不思議。
なんと名前の友人、園子に変装していた!
なぜ名前が気付いたかと言うと園子が名前に対して"敬語"を使ったからだった。
一応高校生とは言えこれでも自称探偵を名乗っていた名前はスーツを着込み園子の近くには行かず周りを観察していたので同級生の友達とは思わなかったのだろう。
宝石の指輪が盗まれた後まだ会場にいた園子を捕まえて屋上に連れていき、「宝石返して?怪盗さん」と言い放てば何度かとぼけていた怪盗キッドも観念して園子の姿から本来の姿を現した。
「bravo(素晴らしい)!ここまで私を追い詰めることが出来たのはあの小さな名探偵以外にLadyだけです」
「美しい貴方に私の心は盗まれてしまった」
「では、Ladyまたお会いしましょう、月下の淡い光の下で」
名前の口を挟む隙もないほどキザな台詞を聞かせ、混乱している間に怪盗キッドはハングルライダーで逃げていった。
いつの間にか名前の左手薬指に宝石の指輪が付いていて警察の方にお手柄だともてはやされた。
まさか2ヶ月後に名前宛に予告状が来るなんて誰が予想しただろうか。
「私別にあなたの心盗んでないし謹んでお返ししますって」
ベランダから満月をバックにマントをたなびかせる怪盗キッドに名前は頭を抱えた。
そもそもなんで家知ってるんですか、ストーカーですか?罪状増えますよ?名前がぶつぶつと言っていた。
「one.two.three!」
なぜかいきなりカウントダウンが始まって指パッチンが鳴った後、名前が着ている服が寝巻きから真っ白なウェディングドレスに変わった。
「えっえっえっ」
「こちらを名前嬢へ」
テンパる名前の目の前には大きな薔薇の花束を持っている怪盗キッド。
片膝を立て少し緊張感が漂う真剣な表情をしている。
「Please marry me.(結婚して下さい)」
「……は、い」
そしてキッド様とあっっっっついちゅーを
「待って待って!!園子途中からおかしいから!」
「えーこれぐらい普通よ」
今は帝丹高校の学園祭で披露する演劇の準備をしていた。園子が台本を書きたいと騒ぎ出すので完成品を読み合わせていた所だ。
この間の私と怪盗キッドが対峙した時の事でその先を妄想するのが最近の楽しみらしく、とうとう演劇の台本執筆まで至った。
「あーあ、私もキッド様とお話したかったなー」
「はいはい、それじゃあお疲れさまでした」
台本の書き直しが決まったのでみんな解散をする。
一人暮らしの私は途中のスーパーで食材を買って家の鍵を開ける……あれ?開いてる?
「お待ちしておりましたLady」
部屋が赤い薔薇で覆い尽くされていた。その真ん中で白いタキシードがとても輝いている。
思わず落とした食材から卵が割れた音がした。
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