「お先失礼します、お疲れ様でーす」

定時ジャストになったので早々に身支度を整えて所々から返事を貰いながらスーツのジャケットを羽織り会社を後にする。大型連休に向けて山のように積み上がっていた書類達はここ数日間の残業と早朝出勤でなんとか片付けた。
デスクワークで凝り固まった肩をマッサージしながら会社が終わった旨を自称探偵に連絡する。……少し動かしただけでも骨が鳴る自分の肩に自嘲気味に笑った。

「お待ちしていました」

道路の端に停車している白い車とそれに寄りかかる自称探偵の安室透がスマホを片手ににっこりと笑っていた。え、いま連絡送ったばかりだったのに。思考停止して動かない私に安室さんは慣れた手つきで私の手を取り助手席に座らせた。

「簡単な推理ですよ」
「(また始まった)」

私の家に向かう車中、安室さんは得意気に話し出した。「いつも送り合うお昼休憩の連絡が無かった事と退勤間際にお腹すいたとSNSに呟いていた事から、お昼ご飯を食べる暇もなく仕事を続けていて終わったら終わったでお腹が空いている事に気付きでも夜には僕と食べる約束もあるので今さら食べれずSNSを見て時間を潰していた。定時に出てくる事はすぐに分かりましたので少し前から待ってたんですよ。」ちょうど信号で車が止まると悪戯な笑顔でウィンクを頂いた。

「へぇ……ん?今なんて?」

話半分に聞いていたが聞き捨てならない単語があったぞ……?

「忙しいのは知ってたのでお昼休憩の連絡のことなら」
「違う、その後」
「お腹すいたってSNSに呟いたこと?」
「なんで私のSNS知ってるの……」

教えたつもりは無いし、なんならやっている事も伝えてない。大体の返答予想は着くが頭を抱えた私に、安室透は罪悪感を微塵も感じていない素敵な笑顔を浮かべた。

「恋人ですから」
「(ストーカーの間違いだよ……)」

盛大なため息を吐く私とにっこにこと運転をする安室透という正反対の図が完成したのだった。





「はっ!まって!いつも返事くれるセロリって人もしかして!」
「あ、それ僕です」
「いやぁぁぁあああ!」


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