▼ 前奏 3
「なんで…」
合鍵もない僕は、どうすることもできなくて、結局そのまま寮に帰った。道行くひとが、号泣する僕をチラチラ見たけど、そんなものは関係なかった。
ひどいよかずや…
こんなに、
こんなにすきなのに、
どうしてわかってくれないの…
『来週の土曜、暇?』
それから数日して、一哉から電話が来た。
「ひま、だけど…?」
『じゃあ俺んち来いよ、』
道分かるよな?迎え行こっか?
そう言ってくれる一哉に「大丈夫ー」、と返して、電話は終わる。
「…どうしよう。」
あの浮気現場が、未だに頭から離れない。
悲しくて、悲しくて悲しくて仕方がない。もし僕が問い詰めたら、終わってしまうのだろうか。
"面倒な奴は要らない"、そう言われてしまうのだろうか。
いやだ。
そんなの、
絶対にいやだ…!
あっという間に約束の土曜になってしまって、僕は一哉の部屋に向かった。こんなに楽しみじゃない週末は、初めてで。
「迷わなかったか?」
「ん、大丈夫だった。」
部屋に招き入れられながら、僕はじっと一哉を見た。
「何?」
「んーん、何でもない。」
やっぱり駄目だ、言えるはず、ないよ…。
ポスン、とソファに座ると、後から入って来た一哉も僕の隣に座った。チラ、と一哉の方を見ると、一哉も僕を見ていて視線が絡まる。
「かず…んっ」
"一哉"、大好きな名前を呼ぼうとしたら、それを遮るようにキスをされた。
「ん、ゃ、待っ、」
呼吸さえ許されないような、激しいキス。
その合間に、プツプツとボタンが外されていく。
「ゃ、そんなっ、いきなりぃっ」
「は、かーわい。」
一哉は笑って、僕の服を脱がす速度をあげた。
「ゃんっ、そこ、ばっかぁ…」
「お前、ここ好きだろ?」
「すき、じゃ、なぃっあぁあっ、はぁ、」
「説得力ないよ。
そろそろいいか。挿れるよ?」
一哉は僕をひっくり返して、後ろから一気に僕の奥へと向かってきた。
「やぁああんっ、ぁ、ぁあん、」
「っ、は、」
「かずやぁ、かずやああ」
「っもっと名前呼んで…っ」
「かず、かずぅう」
一哉のモノが、ドクンと大きくなるのが分かる。
その瞬間、ガツガツとすごい速さで抜き差しを始めた一哉、
でも、
そこまでだった。
バサッ
僕らの背後で、何かが落ちる音がした。
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