にせものamabile。 | ナノ

 前奏 2

「え…?」
「だから、」
「待って、言わないで。」
「匠ちゃん…」
「うそ、え、だって、信じられないもん…」
「本当だよ、僕、見たんだよ…」


"匠ちゃんの彼氏、浮気してるよ。"



僕のクラスメイトが、そう教えてくれた。


「え、いや、友達と歩いてた、とかでしょ…?」
「友達とキスするの…?それってどんな友達…?」
「…っ」


人違い。

きっと人違い。


一哉が浮気してるなんて、有り得ない。


ねえ、
そうでしょう?一哉…。








結局、もやもやしたまま一週間を過ごすことになった。一刻も早く、僕は一哉に会いたくて仕方なくて…、


でも、会ってなんて言おう…浮気のこと、聞ける自信なんて全くないし…



ピンポーン



一哉のドアチャイムを鳴らす直前まで、僕はどうすればいいのかわからなかった。

一哉のアパート、僕は緊張しながらドアの前に立つ。


いつもの楽しいドキドキじゃ、ない。


「…。」


…あれ?出てこない…どうして?

すごく嫌な予感がした。



だって、電気が付いている。


一哉は、出かけるときは必ず電気を消していくひとだ。だから、家にいないなんてことはありえない。


…じゃあ、どうして出てくれないの…?


…そういえば、一哉って窓のカギをかけ忘れることがあった、


ドキン


ドキン


じわり、汗をかき震える右手。それを叱咤して、僕は通路側の窓をそっと開けた。


「!」


"…ゃ、ゃ、ぁん、あぁっ、"


聞こえたのは、明らかに情事中の声。


…、なんで…



なんでなんでなんでなんでなんで…!!!!!


一哉、ねえ、


こんなに好きなのに…

好きで好きで仕方ないのに…



どうして浮気なんか………



prev / next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -