▼ 前奏 1
「ぁん、あん、やあぁ、き、もちぃ、」
「っく、」
「だめ、」
「"駄目"?気持ちいくせに?」
「あぁあ、おかしく、なる、」
「っ、おかしく、なれよ、ほら!」
「あ、あ、あ、あ、あー…!」
体の奥に、熱が放たれたのがわかったと同時に、僕の意識はスゥっと遠くなっていった。
…
「ん…」
目を覚ますと、ベッドの上に一人だった。ハダカのまま布団にくるまっている僕は、あたりを見回すけど誰もいない。
「…。」
散らばった服を自分で集めて、もそもそと布団の中で着ていると、もっとひとりぼっちになったような気がした。
脚の間には独特の感覚がまだ残っていて、さっきから少ししか時間が経っていないことがわかる。そのまま服を着るのはものすごく気持ちが悪かったけれどそれも仕方ない。
「一哉(かずや)…?」
呼んでみたところで、何も返事がないことは分かっていた。
だけど呼んでしまうのは僕のクセ。大好きなその名前は、何度だって呼びたくなってしまう。
僕はするりとベッドから降りて、寝室のドアを開けた。
「…」
「一哉、」
「…、あ、お前まだいたの?」
「っ、ごめん、あの…シャワー借りていい、かな?」
「別にいいけど。」
「ありがと、シャワー浴びたら帰るから、」
さっきまでは僕のことを見ていたのに、それがまるで夢みたいだ。シャワーを浴びて、「じゃあね」って言ったけど、返ってきたのは沈黙だけだった。
最近、一哉はおかしい。
前はもっと僕の話を聞いてくれたし、僕のことを見てくれていた気がする。
何か悩み事でもあるのかな…一哉はあまり自分のことを話したがらないから、心配で。
一哉と僕はまだ付き合って間もないのだけれど、うまくいっている方だとおもう。
駄目もとで告白してみたら、いいよって言ってくれた。その日のうちに僕たちは結ばれて。話し下手だった僕も、一哉がいろいろと話を振ってくれるから、話せるようになってきた。
僕は全寮制の中学にいるから週末くらいにしか会えないのが残念だけれど、それでも、世界中に自慢したいくらいしあわせ。
しかも一哉はものすごいかっこいい。少し長めな黒髪をワックスで無造作に散らしているのだれど、その「黒」にはいつも引き込まれる。
目力があって、モデル顔負けのスタイル、そんでもってちょっと危険なカオリのする美形!
片方の口元だけで笑うのは、少し照れているみたいでかわいいのだけれど。
もー、とにかく!完ぺきすぎっ!
「かずや、すきだよ」
そう言うと決まって「んー俺もー」と言ってくれる。
だから、あんなことになるなんて、僕はみじんにも思っていなかったんだ。
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