▼ G-dur 8
…アハハ。
やっぱりそううまくはいかないけれど。
全っ然わかんない。え、なにこれ、みんな解けてるの?
カリカリカリカリ…
…ウン、みんなの鉛筆の音が聞こえるね!つまり解いてるね!ど、どうしよう…!!!
僕が唯一わかったのは1問目。
「現生徒会長の名前を書きなさい」という問題のみ。たぶんサービス問題だとおもう。
でもそのあとの問題は響会長の誕生日とか、血液型とか、家族構成とか、実家の場所とか、園田家の会社?のこととか…僕が到底知り得ることのないものばっかり。
しかも、嫌いじゃないけど極力食べないようにしてるものとか、いちにち何時間寝るのかとか…もはやどうやったら知ることができるの?みたいな問題もちらほら。
ううぅ…ちゃんとテストがあるって知ってれば、のむちゃんとかに聞いて予習したのにな…。きっとのむちゃんのことだから、響会長のこともようく知ってるんだろうし。
「うっ…うぅー」
大変だ…勢いあまって涙が出てきた。親衛隊の先輩に見つかったら、情緒不安定とかを理由にして不合格にされちゃいそう。そうなる前に止めないと、とずびずび鼻をすする。
(トントン、トントン、)
ん?隣の席から、鉛筆の音とはまた違った音が聞こえてきてちらっと横目で見てみると、潤ちゃんが自分の机を人差し指でとんとんしていた。
その腕の下にはぎりぎりまでこっち側に置かれた答案用紙。
(は、や、く)
潤ちゃんは口パクでそう言って、もう一度だけトントン、と机をたたいた。
もしかして見せてくれてる?!
どどどどどうしよう。僕は頭がわるい。でもわるいなりに、今までカンニングみたいなことはしてこなかった。頭がわるいのはしょうがない。しょうがないから、受け入れている。
だからこの状況に少なからず戸惑っていて、見るべきか見ないべきか、わあどうしよう。
「あと5分です」
先輩の声にパッと顔をあげると目に入るのはあのピアノ。
弾きたい弾いてみたいどうにかしてどうにでもして弾く!!!
僕の心は決まって、潤ちゃんの答案をうつす作業に入ったのでした。
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