▼ G-dur 6
「匠ちゃん、親衛隊スカウトされたの?!」
「え、スカウトお?されてないよお」
「いやいや、持ってるじゃん!それ!」
「?」
「もうーー!どこから説明すればいいのさ!」
なんかぎゃあぎゃあのむちゃんが騒いでいるのだけれど、全然話が読めないよ。どこからって、最初から説明を求めます!
「僕がさっき言った、スカウトってそれのことだよ!それもらうとき、親衛隊の幹部から直々にお声がかかったでしょ、その場合は絶対に入れるんだよ!」
「幹部…あ!」
そういえば、これをくれた歩先輩は響会長の親衛隊幹部だって言ってた気がしてきた。じゃあ僕、必ず入れるの?
「そうか、匠ちゃん親衛隊に目ぇ付けられたかー…」
「え、のむちゃん、それどういうことお?」
「結局さ、綺麗だったり可愛かったり、まあつまり目立つひとって、親衛隊としても脅威なんだよね」
「?」
「会長とかと接近したら困るじゃん?」
「ふむふむー」
「…なんか全然わかってなさそう!」
「え 」
もしかして説明、今のでおわり?
そうだとしたらたしかに、僕なんにもわかってないや。
「だからつまりね、匠ちゃんは野放しにしてたらあぶないだろうなーって判断されたから親衛隊にスカウトされたの!親衛隊はルールが厳しいから、個人的に生徒会に近づくことなんて許されないしね」
「親衛隊に入っても入らなくてもお、生徒会のひとに近づくなんてできないでしょお?」
「まあそうなんだけどね…でも現に、匠ちゃんと会長って一度接近したでしょ?ありえない話でもないわけで」
接近したというか…ちょっとすれ違いましたよーくらいの関わりなんだけど…僕が響会長と会ったのはもう一ヶ月も前の話だし、そのあとは特に…あ、歓迎会で少し話したっけ。でも、あれも僕が問題解くのが遅れたからで…。
でも、余計な心配はしたくないっていうのは、親衛隊のひとたちも一緒なんだな。僕が親衛隊入るのも、告白とかそういうのをふせぐためだし。でもでも、このスカウトの紙を使って確実に入るって、なんとなくやだなあ。
とりあえず、月曜にでも入隊申請書取りに行ってこよっと。ピアノのレッスンが始まるまで少し時間があるから、レッスン棟に向かうついででいいかなあ。
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