▼ G-dur 2
試合途中、ホイッスルが鳴ってみんながぞろぞろとゴール側に集まり始めた。
「何が始まるのお?」
「フリースローだよ、匠ちゃんバスケのルール知らないでしょ」
「あそこにボールを入れる!」
「はいはい、うちの学校がファウルしちゃったみたいだよ」
鮮やかにスルーされましたけど!
「うげ、一哉だあ、投げるの」
はずれろ!神様!はずれろ!!
「あ、一哉くん失敗した!」
「わあい、神様ありがとお」
「匠ちゃん、神様に何頼んでんのさ。むしろ悪魔に魂売る行為じゃない?ソレ」
「ふふん、いっちーが勝てれば何でもいいんだもーん。」
「この小悪魔め!」
2投目。一哉がボールを構えた。
はずれろ!はずれろー!
ボールが手を離れた瞬間、いっちーがパッとゴール下に走った。思わず柵を掴む手に力がこもる。
「がんばれいっちぃーーーー!」
だけど無念、一哉の投げたボールはゴールに吸い込まれていったのでした。
「あああ、なんてことなのお…」
「匠ちゃん、そんなこの世の終わりみたいな顔しないで!1点だからね1点!」
「ううう…たかが1点されど…」
「ネガティヴ!!!」
のむちゃんとあーだこーだ言いながら、ポスポスと吸い込まれていくボールの動きを追うのに夢中になっていたら、あっという間に時間はすぎて。
いっちーチームは僅差で負けてしまったのでした。
試合終了後、1階に降りるといっちーがとても悔しがっていた。
「うわあ悔しいぃいい!」
「ドンマイ!」
「なんか野村に言われるとウザい」
「ひどっ」
「どんまあい」
「うん、橋本に言われると癒されるわ」
「いっちー差別!」
うわあん!と泣き真似をするのむちゃん。これはのむちゃんのおはこ的なやつなのでほっとく。
「俺、反省会あるから戻るな」
「うん、おつかれさまあ。いっちー、かっこよかったよお」
「さんきゅ」
キュッキュッとバッシュの音を立てながら、いっちーは更衣室の方へと爽やかに走って行った。僕たちも戻ろっか、と言いかけたところでのむちゃんの顔がこわばった。
「匠ちゃん、一哉くんきた」
「え」
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