にせものamabile。 | ナノ

 G-dur 2

試合途中、ホイッスルが鳴ってみんながぞろぞろとゴール側に集まり始めた。


「何が始まるのお?」
「フリースローだよ、匠ちゃんバスケのルール知らないでしょ」
「あそこにボールを入れる!」
「はいはい、うちの学校がファウルしちゃったみたいだよ」


鮮やかにスルーされましたけど!


「うげ、一哉だあ、投げるの」


はずれろ!神様!はずれろ!!


「あ、一哉くん失敗した!」
「わあい、神様ありがとお」
「匠ちゃん、神様に何頼んでんのさ。むしろ悪魔に魂売る行為じゃない?ソレ」
「ふふん、いっちーが勝てれば何でもいいんだもーん。」
「この小悪魔め!」



2投目。一哉がボールを構えた。

はずれろ!はずれろー!


ボールが手を離れた瞬間、いっちーがパッとゴール下に走った。思わず柵を掴む手に力がこもる。


「がんばれいっちぃーーーー!」



だけど無念、一哉の投げたボールはゴールに吸い込まれていったのでした。


「あああ、なんてことなのお…」
「匠ちゃん、そんなこの世の終わりみたいな顔しないで!1点だからね1点!」
「ううう…たかが1点されど…」
「ネガティヴ!!!」


のむちゃんとあーだこーだ言いながら、ポスポスと吸い込まれていくボールの動きを追うのに夢中になっていたら、あっという間に時間はすぎて。

いっちーチームは僅差で負けてしまったのでした。


試合終了後、1階に降りるといっちーがとても悔しがっていた。

「うわあ悔しいぃいい!」
「ドンマイ!」
「なんか野村に言われるとウザい」
「ひどっ」
「どんまあい」
「うん、橋本に言われると癒されるわ」
「いっちー差別!」


うわあん!と泣き真似をするのむちゃん。これはのむちゃんのおはこ的なやつなのでほっとく。


「俺、反省会あるから戻るな」
「うん、おつかれさまあ。いっちー、かっこよかったよお」
「さんきゅ」


キュッキュッとバッシュの音を立てながら、いっちーは更衣室の方へと爽やかに走って行った。僕たちも戻ろっか、と言いかけたところでのむちゃんの顔がこわばった。


「匠ちゃん、一哉くんきた」
「え」



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