にせものamabile。 | ナノ

 F-dur 2

「橋本ー」



先生に呼ばれて、テストが返ってきた。



「はーいっ……ってえぇえええええー?!平均点?!?!」
「よくがんばったな」



先生もびっくりしたぞ、なんて微笑まれて、僕テストのときこんな笑顔もらうの初めてなんですけど?!



「しかもはなまるつけてくれたんですか!」
「ははは、つい」



先生ーひいきじゃーん!とクラスの子たちが笑う。ふつう平均点とれたくらいではなまるしないよね。



「次はもっと!がんばります!」
「期待してるぞ」
「はい!」






……






「っていうことがあって」



僕の部屋に遊びにきたひびきに、早速の報告。



「はは、おまえ、クラス全員に点数ばれてんじゃん」
「細かいことはいーんですっ!数学で平均点なんて、初めてだもん僕」
「よかったな」
「ひびきのおかげ!」



ありがとう!、と伝えると、ひびきはちょっとだけ固まって、「おう」と小さく言った。




「? どうしたの」
「相変わらず心臓に悪い……」
「?」




変なひびき。



「あ。そういえば、ひびきはクリスマスパーティー出るの?」
「あーそういえばそんなんあったな。匠は?」
「のむちゃんがぴーぴー言うから出る」
「あいつああいうの好きそう」
「ん、おまつり大好き人間だから」




文化祭もすごく張り切ってたもんな、とひびき。そのとおり、張り切ってたし、楽しんでたし。そうやって、いつも全力なのむちゃんがだいすきだ。



「だからお休みの日にのむちゃ……いや、なんでもない」
「んー?休みの日に?」
「あ、えーっと、そう!今度のお休み、のむちゃんと遊びにいってきます!のむちゃんがメロンソーダ飲みたいって言うから!」
「? おう」



あぶない!のむちゃんとお洋服見に行く、なんてひびきに知られたら、ひびきもついてきちゃいそう。



「で?」
「へ」
「平均点のご褒美、いらねえの?」
「!」


ぺろ、と唇をなめるひびきがセクシーすぎてくらくらする。でも僕は知っている。ここで流されたら大変なことになるって。



「…ひびきはどうだったの、テスト」
「余裕」
「よゆうー?」
「学年1位だった」
「! すごい!」



聞きました?!学年で一番!何それすごい!このひと!このひとが僕のすきなひとです!ってみんなに自慢してまわりたい。



「じゃあ、ひびきにもご褒美必要だね?」
「言ったな?」
「?」
「"ご褒美は僕のすきなことやらせてくれるんでしょ?"って言ってたの誰だっけ」
「!」



僕ですね!!!



「まままままって、」
「待たない」



少しずつ近づいてくるひびき。嫌か?と聞かれて、その聞き方はずるいと思う。



「いや、じゃないけどっ、ここ僕の部屋だから、」
「何が問題なの」
「だって、思い出しちゃう…っ」



ひびきはふ、と笑って僕にキスをした。



「思い出せばいいだろ。毎晩毎晩、俺のこと思い出して一人で寝られねえようにしてやる」
「ひびき、」



ひょい、とベッドに乗せられて、見下ろす彼の目はものすごくあつい。僕のからだに穴があいてしまいそうだ。



「ひびき、すきだよ、」
「…おまえスイッチ入るとほんと無敵だな」
「んふ、きて、」



そのまま両手を広げると、ひびきはぎゅっと抱きしめてくれた。


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