02



光総受けor総愛されで過呼吸になる光
水城さまリク
(総愛されで、謙光色強めにさせていただきました)









最近部室の空気が重い。どこかピリピリとした雰囲気が張り詰めていて居づらい。小春の醸し出す愛らしい空気の邪魔をするのは本間にやめてほしい。しかし理由は明確。謙也と光の大喧嘩や。



いつもふたりでなかよぉしとるくせに、ある日、理由は知らんけど言い合いが始まっていた。最終的に謙也が部室を飛び出した。俺も二人ともと喧嘩をしたことがあるが、あいつらはそんなちっちゃい男やない。謙也はしょうもないことでムキになったりもするけどすぐに「ごめんな」が言える理性的なところがあるし、光は普段毒舌炸裂させとるくせにいざ喧嘩となると相手が本間に傷つくようなことは言わないしあまり頭に血が上ることはない。要するに二人ともそんなに喧嘩を先延ばしにしてしまうようなやつらちゃうんや。


そんな理性的な謙也が財前を突き放すような真似をして、光が感情をむき出しにして怒って、いまだに仲直りが出来ていない。ちょっとやっかいなことになったぞ、と俺は心の中でため息をついた。







二人が喧嘩を始めて早二週間。部室に謙也はまだ来てない。光はすっかり元気をなくしてしまっていて、顔色も良くない。


「おいこら光」
「ユウジ先輩」
「お前ちゃんと食っとる?顔色悪すぎ。ちゅーか前にもましてガリガリやんけ」
「………」
「いつまでも意固地になっとらんと、早く謝ってまえ。俺たちかてお前のそんな顔見たないわ。」



そう言って光の頭をわしゃわしゃってやってやった。謙也がいつもこいつにするみたいに。そしたら光の目がどんどん潤んでくる。



「ユウジの言う通りやで」
「部長、」
「財前が辛そうなんは俺もいややわ。いつもみたいな可愛い顔もっと見せてほしいんやけどな」
「光くん、素直になることは簡単なことじゃなかかもしれんけど、そろそろごめんなさいしよ。もっと言いづらくなるよ?」
「千歳先輩も、」
「せやで!もっとアタシらに相談してくれてええんやで!光ちゃんはいっつも一人で溜めこみすぎよ!」
「なんかあったかいモン買うてきたろうか?」
「財前はん、あんまり無理しなや」
「小春先輩、副部長、師範…」



金ちゃんがひょこひょこってやってきて、光の手をきゅって握った。


「光、大丈夫か?」





次の瞬間、光の目からぼろぼろって涙がこぼれた。



「すんません、本間すんません。金太郎にまでこない心配させるなんて、俺本間に阿呆やな。」
「やから、そんなこと気にせんくてええんやって」
「俺、今まで我儘放題やった。謙也さんの優しさに甘えて、ひどいこともたくさん言うた。それでも笑って許してくれてたから、調子乗っとった。何言うても受け入れてくれるんやって勘違いしとった。」
「光ちゃん…」
「謙也さんな、『もうお前なんかしらんわ』って言うたんや。あの優しい優しい人が、俺の我儘なんでも聞いてくれた人が、知らんわ、って。俺、頭ん中真っ白になった。今まで俺は何しとったんやろって思った。最低や。」
「光、光だけが悪いわけとちゃうやろ?」
「俺が悪いんです。謙也さんのこといっぱい傷つけたのは俺です。みんなにも気遣わせて、もう全部全部申し訳なくて。もう…消えてまいたい」
「財前はん、」



光の涙はぼろぼろと零れて止まらない。こっちまで息が止まりそうなほどに苦しそうな顔をしている。白石がちょっとでも落ち着くように光の背中をさする。



「なぁ部長…俺、一生このままやったらどうしよう。謙也さんが、一生俺に笑いかけてくれんくなったらどうしよう。」
「光、そんなこと絶対ないから、」
「ダブルスしたくないって言われてもうたらどうしよう。光なんて大嫌いやって言われたらどうしよう。隣におってくれんくなったらどうしよう、おれ 、どうしよう…」
「財前、」
「謙也さん、どうしよう、謙也さん、けん、や、さん…け、やさ、…!はぁっ、は、っ…けん、やさ…ぁ…!」
「…!ちょぉ光おかしないか?!」




次第に光は喋れへんようになって、白石に凭れかかってぜぇぜぇ言いだした。アカン。これ過呼吸や。苦しそうに白石の腕に縋りついて、俺たちはもう半分パニックやった。金ちゃんが「光…!!」って泣きだして、みんなあたふたしとる。


「光ちゃん過呼吸なっとる。くらりん、そこにある袋で光ちゃんの口覆って。」
「あぁ。金ちゃん、光大丈夫やから。こっちきて背中撫でてあげて?」
「うんっ…!ひかるぅ、わいが治したるからなぁ…!」




白石が光の口元に袋をかぶせて、光は苦しそうに何度も大きく呼吸を繰り替えす。光自身もこんなこと初めてって感じで顔から動揺しとるのがうかがえる。俺は光の処置の邪魔にならん程度に軽く抱きしめて、耳元で囁いた。…謙也の声で。




「光、大丈夫やで。なんも怖いことない。大丈夫や。」
「はぁっ…け、やさ…」
「みんなお前のこと大好きやもん。傍におるよ。」
「…ぁ…!」
「俺もお前のこと大好きやもん。離れてったりなんかせぇへんよ」






光は少しずつ落ち着いてきて、そのまま部室にあるベンチに横にならせた。するとその直後、部室の扉が開いた。謙也や。



「光…?!どないしてん!!」



謙也もいつもと違うその光景にめちゃくちゃ驚いた顔しとった。それもそのはずや、光が顔真っ赤にしてぜぇぜぇして、俺たちが回り囲んでんねんから。すぐ駆け寄ってきて光の手をぎゅっと握った。



「光、どないしたんや!?どこか痛いんか?!大丈夫か?!」
「謙也さん…」
「顔色めっちゃ悪いやん!なんか食いたいもんあるか?俺に出来ることあるか?うちの病院今からでも…」
「謙也さん、ごめんなさい」




へ?って顔した謙也に、光はそのままつづけた。



「いつも素直になれへんくて、傷つけてばっかりでごめんなさい。謙也さんの優しさに甘えてしもて…。お願いですから、俺のこと嫌いにならんといてください…」



謙也はすごい驚いた顔した後、顔ぐしゃぐしゃにして泣き始めた。光のこと思いっきり抱きしめながら。



「おま、そんな悩んで…俺のせいでこんなに苦しんどったんか。」
「謙也さ、」
「っ、ごめん光!本間にごめん!!お前のことこんなになるまで追い詰めて、ごめん!お前のこと嫌いになるとか絶対無理やし、大好きやし!!今回タイミング逃して謝れへんかったけど、こないなことになるならさっさとごめんなって言えばよかった。本間にごめん…」
「謙也さん…う、ごめんなさいぃ…っ!」



ふたりでわんわん泣いとる様子を見て、銀と健二郎と金ちゃんは嬉しそうに笑った。俺と白石と千歳と小春はと言うと…



「おい、謙也。」
「次光ちゃんのこと泣かしたら…」
「お前のこと殺すからな。」
「よぉ覚えといたほうがよかよ?」


謙也はこれ以上無理ってくらい眉毛を垂れ下げて、「そんときはもー俺のこと殺してくれ…!」って涙でぐちゃぐちゃの顔で言って、俺たちは思わず笑った。




でも、もしも辛いことがあったときは、たまには俺の前で泣いてくれてもええのにな、なんて思ったことは、謙也にも白石たちにも、光本人にも内緒なままなのやった。









***
光総愛されとの指定でしたのに謙也とユウジを前面に押し出した感じになってしまいました…。すみません…!
ユウジ→光を今年も推していきたいと思います。
リクエストありがとうございました!





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