ザ・アンサー




謙光で喧嘩してから謙也が告白されてるのを目撃してしまい、別れようかと迷ってしまう光
蒼さまリク








Q.1 男が男と付き合う上で利点とは何か?


ぱっと考えてみて浮かんだのは、まずどれだけ生でヤっても妊娠しないこと。でもそれも将来的には子どもが産めないという最大のデメリットに変わる。あとは、女みたいに泣いたりしないこと、くらいかな。


圧倒的に女と付き合ったほうが世間的にもよいに決まってるし、辛い思いだってしなくて済む。それでも俺を選んだのは謙也さんやで。こんな可愛くなくて優しくもない俺を、好きやって言うたのは謙也さんやで。あんたにもその辺は責任っちゅーもんがあるやろ。





「…言ってもわからんならこっちもこれ以上言うつもりないわ。ほな。」



3日ほど前、最後に聞いた謙也さんのことば。些細なことやったはずやのに俺は変に強がってしまった。いつもの喧嘩みたいに大声を出すこともなく、謙也さんは静かに上のセリフを俺に告げた。たまたまテスト週間も重なっていて話すどころか姿さえ見ていない。



俺は女の子がうらやましい。謙也さんの隣になんの罪悪感も持たずにいられる存在、俺には一生叶うことのない夢物語だ。



なんでこんなに考えてもしゃーないことで俺がふさぎこんでいるかと言うと、全てはさっき屋上から聞こえた会話のせいや。




(謙也くん、うち謙也くんのこと好きやねん。)
(ありがとう。せやけど今はテニスに集中したいんや。ごめんな。)
(…ううん。いいの。こっちこそありがとう。…これからも、友達でいてもええかな?)
(なーに言っとんねん!当たり前やろ!これからもなかようしてや!)






俺は気付かれないように扉を閉めて、部室に向かった。昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ってたけどそんなの気にしてられない。息を切らしながら部室のドアを勢いよく閉めた。



俺だって、ホンマはおもいっきり泣きたいんや。


謙也さんと付き合うてから、あの人は俺に何度も「甘えてええよ」って言ってくれた。それでも俺はそんなこと出来なかった。面倒なやつって思われたくなくて。謙也さんの俺に対する愛情は一時的なモンやないかって可能性を捨てきれなくて。ホンマは謙也さんの前でいっぱい泣いて、抱きついて、どこにも行かないでって、他の女のとこ行かないでって、それで、それで、それで。


そんな風に出来てたら苦労なんてしない。





―ガチャッ


「あ…光…」
「…謙也さん」
「偶然やな、お前授業さぼっとったらあかんやん。」
「…謙也さんこそ」
「あー…せやな。なんか授業受ける気せぇへんくてさ」




ホンマはこの人、きっと分かってたんや。俺がもしかしたら部室におるんちゃうかなーって。それできっと、謝りに来てくれたんや。いつもケンカの原因は俺で、終わらせるのは謙也さんで。そんなのもう謙也さんがかわいそう。今俺、きっと頭に血ぃのぼっとる。今から謙也さんに言おうとしとること、後悔する。でも勢いある時やないとなかなかこんなこと切り出せへんから、これは良い機会なんや。



「謙也さん」
「なに?」
「俺たちが一緒にいて、いいんですかね」
「…何が言いたいん?」
「俺たちが一緒にいて、あんたにとって良いことなんてあるんですか?っちゅーことですわ」



いつかは離れなければいけない日が来ることは分かってるけど、ことばにしてみると刺されたように心は痛かった。今更後に引けず、縋りつくこともできず、俺はただ奥歯を強く噛む。



「…たしかに、俺たち一緒におってもいいことなんか一つもないかもな。男女の恋愛みたいに楽ちゃうし、世間からの風当たり強いし。光はいつも素直になってくれへんから何考えとるのか全く分からんし、優しくないし、可愛くないし。俺たち一緒におらんほうがええのかもしれへんな。」
「………」
「って言えば満足なんか阿呆」



謙也さんは俺の頬をつねった。つねったというか、やわらかく挟んだ、というべきか、全然痛くない。




「まーたぐるぐる考えとんのやろ。そんなん無駄やで無駄。ってなんか俺白石みたいやん」
「は、」
「光、いっつも不安なんやろ。俺の将来がどうとか俺のためにずーっと悩んでくれとんのやろ。優しいな、光。ありがとう」
「………」
「俺、大体お前の考えとること分かっとるから大丈夫やで。」



謙也さんは優しく俺の首を撫でる。この人はなんてあったかい人なんだろうか。手も心も。



「光はいちいち深いところまで考えすぎやで。まー俺が考えてなさすぎなんかもしれへんけど。」
「…やって、」
「でもそんなに深く考えなくてもええんちゃうかなーって思うよ。やって結局はさ、俺とお前が好き合っとるっていうのが一番重要で一番難しいことやん。それが出来とるならあとは大丈夫や思っとんねん。お前のことは俺が守ったるし。な?」





あぁ、どうしよう。俺は今まで気張りすぎてたんかもしれへん。子どもだって出来ないけど、女みたいに泣かないだなんて言いながら女々しいことをぐずぐず考えてしまうような俺だけど、だけど、だけど。



「あと、可愛くないなんて嘘やからな。めっちゃめちゃかわええよ。俺、光のことホンマ大好きやねん。」
「………っ」
「どや!いつまでも泣きそうな顔しとらんとそろそろ泣け!ほら、謙也さんの胸に早く飛び込め!」
「…あほか!」



謙也さんの前で初めて泣いた。強く、抱きしめられながら。多分これからはもっといっぱい泣いてしまうかもしれない。それでもきっといいんだ。そのぶん素直になって、そのぶん頑張って言葉にして、ありのままの俺を、もっと好きになってもらいたいから。



「…謙也さん、この前、ごめんなさい。」
「うん、ええよ。俺も寂しい思いさせてもうてごめんな。」
「うん。」
「光、俺のこと好き?」
「…めっちゃすき。」





Q1.男が男と付き合う上で利点とは何か?


A. 正解なんてわからないけど、とりあえず俺はこれから、この人を幸せに出来ると思う。それだけできっと、充分なんだと思う。










***
結局ゲロ甘―!!(笑)さばさば財前も好きだけど、ぐちゃぐちゃ悩む繊細財前も大好きなのです。謙也さんは優男!!
蒼さま、リクエストありがとうございました!!






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