コンビニエンスブルース
コンビニ店員光(高校生)と医大生謙也で謙光、謙也の通う大学の近くのコンビニで謙也に会いたくてバイトをする光
もたりさんリク
医者というのはとても大変な職業で、医学生というのもまたとても忙しい。それだけ大きな夢なのだから、頑張るしか無いのだけど。
大学入ってから一人暮らしを始めて、恋人である光とは少し距離が開いてしまうけどこれからは俺のアパートに呼べばええやん、寧ろ半同棲とかしてまえばええやん。なんて軽くて甘い考えが出来たのは最初だけやった。
部活も夏休みの少し前に引退したし、テニス推薦で大学受験合格ほぼ確定な時間に余裕がある光。大学生入ったはいいものの毎日膨大な量やることがあって余裕の無い俺。もともと時間の使い方が下手くそなこともあって最近光とも全然会えていない。なんだか申し訳なくてせっかく作った合鍵は結局渡せないままだ。
「やば…暗くなっとるし…」
今日も課題をやるために学校に残ってたけど、いつの間にか眠ってしもた。とりあえず荷物をまとめて家に向かう。
あー…寝てしもたけどまだ終わっとらん。最近寝不足やし全然寝足りんわ。しんど…。
とりあえず帰り道、大学近くのコンビニで弁当を調達する。自炊も全然やってへんなぁ。ぼけーっとしながらレジに弁当を出す。
あぁ、光に会いたいなぁ。
どんなに疲れていても、光に励ましてもらうだけでめっちゃ元気が出る。最近はメールのやりとりをするくらいで全然会えてない。寂しいなぁ。光は俺よりもっともっと淋しがりやから、怒ってるかもしれへんなぁ。せやけど時間が無いのが現状。無理して時間作って会えたとしても、光にきっと気を遣わせてしまう。そんなのは俺のプライドが許さない。…ちっぽけなプライドやけどさ。
「3600円になります」
コンビニ弁当1個にしては高すぎる金額に驚いてレジ袋を見ると、店内のもの全部やないかって量の善哉がパンパンに入っていた。顔をあげると、そこにおったのは…
「ひ、光…!!?嘘やろ…!」
「なんですか。はよ金出せ」
「有無を言わさず善哉を買わせるこの感じ!間違いなく光や!!」
ぼーっとしとって気づかんかったけど、レジのお兄さんは某コンビニの制服がとっても可愛い光くんやった。なんでこんなところに…。
いや、なんでこんなところに、ちゃうか。なんでなんて決まっとるよな。…俺のためや。
「まったく。コンビニ弁当なんて栄養偏ったモンばっか食っとるからそんな頭悪そうな髪の毛になるんすわ。今日飯作りに行ってやるから元あったとこに戻してこい。」
「え、ええの!?」
「他に女連れ込んどるなら帰りますけど」
「そんなわけないやんか!」
「分かっとるわ。俺あと15分くらいであがりなんでそこのエロ本でも立ち読みして待っとってください」
ジャンプ立ち読みして(善哉が大量に入った袋は持ったまま)15分ちょっとで光はバイト終わって、一緒に俺ん家に帰った。
「ただいま〜っと」
「ほら、残っとる課題やってください。その間に飯作っとくから」
「光ぅ…」
「あ、善哉は冷蔵庫な」
光はがさごそと食材を漁りはじめた。少し出来上がるまで時間は掛かりそうだけど自分もやることがあったからちょうどいい。手際よく夕飯を作ってくれた光は風呂掃除もぱぱっと済ませて湯を溜めてくれた。
とりあえずこれで明日はなんとかなるかなーくらい終わらせたあと、「謙也さん、ご飯出来ましたよ」と光の声が聞こえた。いいにおい。幸せ。
光が作ってくれたご飯を食べて、おいしくてじ〜んとした。幸せ。
光がいてくれるだけで、とてつもなく幸せ。
お願いして一緒にお風呂入って光は善哉食って。流石に疲れすぎとってえっちする元気は無かったけど、どうしても光に傍におって欲しくて泊まってもらうことになった。一緒に布団に潜り込む。小さな体を抱きしめる。
「光、ホンマにありがとう。めっちゃ嬉しかったよ。ご飯もめっちゃ上手かった!」
「別にええですわ」
「なかなか会えへんくてごめんな」
「勉強頑張っとるならええです。謙也さんアホやから大変なんやろ」
「アホ言うなや!」
「ふふ」
「あ〜…なんや、あれやあれ。バイトも俺の為に始めてくれたんやんな」
「嫌でしたか」
「ううん、嬉しかった。嬉しかったけど、光は無理してへんか?」
「してへんわ」
「…そっか」
光は俺の目を見ずにポソリと言った。
「俺、謙也さんがストーカーみたいでキモいとか思わないならバイトも続けたいです。」
「思うわけないやん。顔見れて嬉しい」
「それに俺、なかなか料理上手やろ」
「せやな。毎回びっくりするわ」
「せやから、気ぃ向いたら合鍵とか作ってくれたってええんやけどな」
いつも自分の言葉を音にするのが苦手な光が一生懸命俺にくれた言葉。精一杯伝えてくれた言葉。俺は光をいつもひとりぼっちにしてしまう。ダブルスもギリギリで駄目にしてもうたこともあるし、中学も高校も先に卒業してしもた。それでも光は一生懸命追いかけて来てくれる。俺に嫌われたりせぇへんかな、俺に迷惑にならへんかな、っていっぱいいっぱい考えて、それで俺のところに来てくれる。
「ホンマはもうあんねん、合鍵」
俺はなんて幸せ者なんだろうか。
「…え」
「光に渡そ思ってずっと前に作っといたんや」
「うそ、」
「ホンマ。あのさ、バイト先から光ん家あんま近くないやん。夜遅く原チャで帰すん心配やし、いつでも家入っておいでや」
「………」
「…あー。ごめん言い訳。心配なんもホンマ。せやけど1番は、可愛い光と一緒におりたいから!」
光の顔が涙で歪むのが分かった。俺は光を苦しいくらいに抱きしめて、光の額にキスを贈る。
「…めっちゃうれしい」て言ってくれた光にはホンマに感謝の気持ちが込み上げてきて、ついでに涙も込み上げてきて、それも光に気づかれて笑われて。
ふたりで泣きながら笑った。
「いらっしゃいませ」のあとのちょっと嫌そうな、恥ずかしそうな顔。「おかえりなさい」のあとの幸せそうな顔。両方知ってるのは俺だけでいい。辛いときも嬉しいときも、やっぱ光がおらなあかん。
「いらっしゃいま…暇人め」
「暇人ちゃうわ!可愛い光見に来たの!なぁ、今日も家来てくれるやろ?」
「…しゃーないから行ったるわ。しゃーないから。」
コンビニ弁当はもう買わなくていい。代わりに善哉を買って、愛する君の帰りを待つのだ。
光、もう俺のこと追いかけなくってええよ。せやからふたりで手繋いで歩こうな。今までいっぱい我慢させた分、いっぱいいっぱい愛してるって伝えるから。
髪から俺と同じ香りのする店員さんのためにこのコンビニに通う日々は、まだまだ続きそうだ。
***
一度やってみたかったコンビニ店員光が書けて満足です。ありがち展開すみません王道大好きなの…
もたりさん、リクエストありがとうございました!
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