君と僕とで宝の地図を




「揺られて目指すは宝島」みたいな鳳宍をほんのり匂わせつつ謙光(又は謙光♀)
よしこさま
(mainにある「揺られて目指すは宝島」の続編にさせていただきました。謙にょた光です。)














大阪に来てからの長太郎は前以上に楽しそうだった。気のいい仲間にも恵まれ、毎日楽しそうにやっている。


だけど今年に入ってから少し寂しそうだ。親しくしていた学生が遠い学校に通うことになったらしい。「元気にやっているかな」「仲良くやっているかな」と4月に入ったばかりのときは耳にタコが出来るくらい聞いていたが、最近ではそれも減ってきた。


耳に五輪ピアスがついた、光ちゃん。


…別に妬いたりなんかしない。あんなにベタベタに甘やかされて、愛されていると常に思うから心配する余地も無い。


ただ羨ましいとは思う。話聞いてるだけでも可愛いげあるなーと思ったから。やっぱり俺には無いものだし。











俺は基本的に家事をしている。長太郎にいつでも家にいてほしいと言われて断れなかったし、その気持ちもとても嬉しかったし。初めは全然ダメだった料理や掃除も今では楽しいし上手に出来るようになった。


俺はスーパーで買い物を済ませて家に帰るところだった。駅の前を通って自宅へ向かう。
その時、大きな荷物を持って座り込んで俯く女を見つけた。どうかしたのだろうか、と思うのと同時に目に飛び込んで来たのは五色のピアスと艶やかな黒髪。







「……………光?」






思わず口にしてしまったのは、何度も長太郎から聞いていた名前。しまった、そんな訳無いじゃないか。長太郎は彼女は大阪を出て行ったと言っていた。それに彼女を俺は見たことない。


なのに、五輪ピアスのその子は顔を上げて涙を零した。



「ふぇ、う、うぇぇ…!」
「わ!ちょ、なんで泣くんだよ!」
「う、すみま、せ、ひっく」
「えっと、俺別に怪しいモンじゃねぇんだよ!駅員の長太……いや、鳳ってやつわかるか?それの同居人で…」
「………宍戸、さん?」
「え」
「鳳さん、から、聞いたことがあって。…ひっく、鳳さんの先輩の、宍戸さん。」




















「おかえりなさい宍戸さ………え!?」
「おう。ただいま。」
「ひ、光ちゃん!?」



なんだかんだ俺はびーびー泣いてる光を置いて帰ることは出来ずに家まで連れて帰ってきてしまった。


「高校が長期休暇やから2週間くらい前に謙也さんとタイミング合わせて地元帰ってきて、今日一緒に戻る予定やったんです。せやけど些細なことで喧嘩してしもて。もうええって言ってしまったんです。そしたら謙也さん、ホンマにどこか行ってしもた」
「そうだったんだ…」
「なんか実家へも戻るに戻れんくって。途方にくれとったら、宍戸さんが声かけてくれて」
「…光ちゃん、今日どうする予定?」
「どうしよう…。ひとりで下宿先戻ろうかな」
「なんならうち泊まってけば?」
「え!?」
「そうだよ!もう遅いし!あ、心配しなくても悪いことしないよ!!」




光は初めは戸惑って遠慮していたが、最後には「お願いします」と頭を下げた。



結局3人で食事を採って、談笑をしてから眠りについた。光には部屋をひとつ貸した。














夜中突然目が覚めた。隣に長太郎はいない。多分こいつも目が覚めて、コンビニにでも朝飯を買いに行ってくれたんだろうな。俺は喉が渇いたから水を飲みに立ち上がった。




「…お、」
「あ、お水…もらってもええですか」
「あぁ、いいぜ」




やはり寝付けないのだろうか。こいつ、ずっと泣きそうな顔をしている。





「……初めは、好きでいてくれるだけでよかったんです」
「…うん」
「ううん、寧ろ夢に向かって元気に頑張っていてくれるだけでよかった。やのに、今は…」
「うん」
「1年間の遠恋の間に、甘え癖でもついてしもたんですかね、うち。わがままばっかで…。もっと一緒にいたいとか、他の女の子のこと見ないでほしいとか、欲しがってばっかなんです。」




光が俯いて、涙がこぼれ落ちるのが分かった。






「いいじゃねぇか、欲しがったって」
「え、」
「好きだから欲しがるんだろ。それ、全部謙也ってやつに言ってやれ。きっとなんでも叶えてくれる」



俺の場合、欲しがる前に長太郎が全部与えてくれた。でも長太郎が求める愛情に、俺は応えられているのかわからない。きっと一生わからないのだ。だって、どんなに愛し合っていても俺は長太郎にはなれないのだし。だから、自分なりでいいんだ。自分なりの愛し方でいいんだ。
そう分かるのに、俺だって随分と時間がかかったけど。







「…ありがとう、宍戸さん」
「おう」
「宍戸さんは、本当に鳳さんのことが大好きなんですね」
「え、」
「ごめんなさい、本当は最初から知ってたの。鳳さん、よく言ってたから。¨恋人の宍戸さん¨と一緒に住んでるんだーって」



あの野郎…!そう思うのと同時にガチャ、という音がした。




「あれ、二人とも起きてたんですか?」
「長太郎ここに来て正座」
「えぇ!?俺何にも悪いことしてないですよ!!まぁ良いことならしましたけどね!」
「うるさい早く正座」
「ちょ、まず話聞いてくださいってば!」




長太郎のうしろからキラリと金髪が見えた。…なんなんだこのカップル。



「謙也、さん、」
「光…」
「長太郎、どうした」
「へへ、お手柄でしょ。公園に落ちてたから拾ってきました!」
「落ちてた言うなよお前」
「光のこと置いてってしもたのにひとりで実家帰ったり下宿先戻ったり出来へんかった。……光、ごめんな」
「謙也さん…うちもごめんなさい」
「俺、アホやから言われるまでわからんねん。せやから光はもっとわがまま言うてくれ」
「…うち、もう十分すぎるくらいわがままです。」
「アホ。もっとやもっと。も〜〜〜っといっぱい俺にいろいろ教えて?」
「はいっ…!」


















泣き腫らした目も今となっては微笑ましい。子供みたいな寝顔で眠る二人を見て、俺は自分と重ね合わせる。未来なんていくらでも作れるものだ。俺と長太郎だってそうだったんだから。





「ほら、忘れたのか長太郎。早く正座」
「え〜…」
「早く」
「はい…」
「よし」
「え、宍戸さん!?」



正座した長太郎の膝の上に跨がって抱き着いてキスをおくる。愛情は、いくつあってもいいもんだ。



宝物は自分の足で目指して、自分の手で守るもの。手離さないことは難しいことかもしれないけど、こいつ相手だと案外出来てしまうもの。長太郎だから、出来てしまうもの。きっと、謙也と光もそうだろ?


離してやる気なんて無いんだから、重いくらいでちょうどいいんだ。俺はいつまでも優しくて可愛い長太郎の耳に唇を寄せて、愛してると呟いた。









***

結局続きが書きたくなってしまって続編にしてしまいました。
宍戸さんはいつまでも私のアイドルです!
よしこさま、リクエストありがとうございました!





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