俺的愛情表現
ユウ光で、先輩関係やらで弱ってるけど強がりな光をユウジが助ける
clearさま
「なんか知らんけど天才らしいで」
「なんそれ、自称?はは、ウケる」
「たまにおるよなぁ〜そうゆう勘違い野郎って」
横を擦れ違ったとき上級生にでかい声で言われた言葉たち。アホやなぁって思う。幼稚やなぁって。わざとらしく言われるくらいならそれで済むけど、最近直接的な暴力も増えてきたもんやからたち悪い。あぁ、今日も胃が痛い。
愛想が悪いのは自分でも分かっているけど、そこまでされるほどの態度はとっていない、と思う。俺なりに必死に練習を頑張って、気づいたら天才と呼ばれるレベルに成長して、そこから嫌がらせは始まった。謙也さんやら白石部長やらが俺に構ってくるのも気に入らんらしい。
俺は昔から感情を言葉や表情に出すのが苦手な子供やった。せやけど苦手なだけで不快を感じていないわけではない。痛いのは嫌いだし悪口だって言われたら気分が良くないものだ。
それでも部活を辞めるなんて悔しいことは絶対したくない。テニスが好きやから。負けたくないから。
帰り、部室で一人。口から自然に漏れるため息。胃がキリリと痛んでへたりこんだ。すると、ドアが開く音。あいつらやったらぼこられる。そう思って反射的に顔を向けると、そこにおったのはユウジ先輩やった。
「なんや、まだおったん」
「はぁ。お疲れっす」
「ん。」
俺はごそごそと着替えを始めた。ユウジ先輩は忘れ物を探しているようやった。
「なぁ財前」
「なんすか」
「その腹。誰にやられたん」
びっくりした。ユウジ先輩が俺のこんな傷に気が付くなんて。
「転んだだけっす」
「ふーん。スライディングでもしたん」
「まぁそんなとこっす」
「…お前がそれでええんなら何も言わんとくわ」
ユウジ先輩は俺の頭をくしゃりと撫でてきた。やめてや、ガキとちゃうんやけど。
「俺も去年いじめられたことある」
「え、」
「目つき悪いから」
「…そっすか」
「ぼっこぼこに殴り返してやった。」
「………」
「お前出来へんやろ。喧嘩弱そうやもんな。」
「別に、めんどいだけっすわ」
「ホンマにしんどいとき、『ユウジさん助けて!』言うたら助けたるわ」
「…考えときます」
「はは。ほなお先」
ユウジ先輩は不思議な人やと思う。ちゅーか、変な人。普段は冷たくてきついくせに、二人っきりになると助け舟を出してくれるようなことを言い出したり。実際助けてもらったことはないけど。せやけど俺も俺で、ユウジ先輩と部室に二人やと少し安心したような、ほっとした気持ちになる。
家に帰ってメシ食って、おかんの味噌汁が身体に染み渡るときが一番幸せなんて俺はどこぞのおっさんか。
学校、行きたくないなぁ。
屋上でサボったろうかとか考えたんが間違いやった。いつも嫌がらせしてくる先輩らに囲まれて、にやにや顔で文句を言われる。馬鹿らしい。
俺がビビらんのが気に入らないのか、そのうちの一人が頬を殴ってきた。普段は腹とか、目立たへんとこしか殴ってこぉへんのに。
思わず睨みつけるとさらに腹を立てたようで、俺をめちゃくちゃに殴り始めた。
「おい、あんま傷付けたらやばいんちゃう?」
「ええわ、しばらく部活これへんよぉにしたろ」
拳が俺の身体にめり込む。痛い、苦しい。なんでこんな目に合わなあかんの。どんどん殴られて、身体がうまく動かんくなってきた。腹に思いっきり拳を入れられて、息が一瞬止まった感じがした。
そのままくず折れるように倒れ込むと、頭を踏まれた。痛い。痛い。声も出ない。
そのとき屋上のドアが開いた音がした。目線をちらりと送ると、そこにいたのはユウジ先輩やった。
「なんや一氏か」
「よかったわ白石とか謙也やなくて」
「……………」
「………ユウ、ジ、さ、…助け、てぇ…っ」
思わず口から出たのは、あの日の言葉。ユウジ先輩が俺にくれた言葉。ホンマは嬉しかった。俺の味方をしてくれる人がひとりでもいるなら、まだまだ前を向いて歩いていけそうやと思ったから。
ユウジ先輩はふわっと笑って、「財前、今からしばらく目つむって耳押さえて伏せとけ」って言うた。俺はその通りにした。
しばらくそうしていた。肩をぽん、と叩かれたので目を開けると、泣きそうな顔した白石部長がいた。謙也さんとオサムちゃんが少し遠くで真剣に何かを話している。
「財前、ホンマごめん」
「部長は全然悪くないやないっすか」
「こんなになるまでお前を追い詰めたのは俺の責任や」
「平気です。俺、ずっとあんたに心配かけとったん分かってました。俺こそごめんなさい」
「…うん。あいつらの処分はどうなるかわからへんけど、なんとかするから。もうこんなことならんようにするから。」
「…部長、ユウジ先輩どこですか」
部長に教えられた通り保健室に向かう。ドアをそっと開けると、適当に怪我の手当てをしようとしとるユウジ先輩がいた。傷だらけやけど、あんな人数を一人で片付けるなんて。この人ホンマに喧嘩強いんやな。
「お前血出とる」
「ユウジ先輩の方こそ」
「俺はそんなやわやないからええねん」
「…ホンマ、ありがとうございました」
「…『ユウジさん大好き!』て言うたら胸貸したるで」
いつからだろうか。この人は俺にとって特別な存在となっていたみたいや。多分。俺の意志を尊重してくれるのに、いざとなったら守ってくれる。こんなの落ちない方が無理な話やんな。
「ユウジさん、大好き」
ほら、『大好き』という表現がすごくしっくりくる。次の瞬間、俺は先輩の腕の中やった。この人の鼓動、異様に早い。
「財前。こんなことあったけど、変わらんとってな」
「はぁ、」
「そのまんまでおって。お前にはそのまんまでおってほしい」
「ユウジ先輩。『光』って呼んでくれたら、ちゅーしたってもええですよ」
優しく、甘く。くちびるが触れ合ったあと、ユウジ先輩は「光、好きや」と呟いた。順番ちゃうやん。せやけど、俺も同じやな。キスして自分の気持ちを確信するなんて。
俺はこれからも、背筋伸ばして胸張って生きていく。たまにへこんだり、辛くなったりしても大丈夫。この人が俺のこと助けてくれると思うから。
ユウジ先輩は、「ぎゅってさせろ。そしたら、ずっと一緒にいたる」という、魔法の言葉を言った。
***
無駄に長くなってしまった…。
強がり要素が少なめになってしまい申し訳ないです。
そして私はユウジ先輩に夢見すぎですね!!
clearさん、リクエストありがとうございました!
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