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謙光で大学生になった謙也さんと高校生光の遠距離恋愛
都さま











大学進学を機に東京へ行くことになった俺。地元大阪、俺の出身高校にもう一年通う光。学年が違うとはいえ、中学高校同じ地にいて一緒に部活をしていたあの頃。今は所謂、遠距離恋愛というやつだ。


お互いが惹かれ合い恋人同士になってからもうかなりの年月を重ねてきた。それでも嫉妬や不安が常に付き纏ったり、光のことが可愛くて可愛くて仕方なかったり、俺は昔も今もこいつに夢中なんやなぁって思う。



距離が開くことは心配やったけど、俺達は前以上に仲良くなれた気がする。メールも前以上にしているし、電話も寝る前、たとえ短い時間でも毎日している。俺は光の大切さが前以上に分かったし、光も前よりも素直になったから同じ気持ちなんだと思う。


せやけど、やっぱり近くにおれたらなぁって思う時はいっぱいある。










金曜日。俺は一旦家帰ってからバイトに向かう。光にメールしとこうかと思った瞬間、携帯が鳴った。光からで着信を知らせるものやった。まだこの時間は部活なはずやのに。


俺が通話ボタンを押すとすぐさま「あ、ねーちゃん?」て光の声が聞こえてきた。




「今やっぱりメシ食えへんからゼリー買うてきて。あと冷えピタもう無いねん」
「………」
「ねーちゃん?」
「ウンわかったわ光くん!」
「うわっっ!」



本気で嫌そうな声出された。酷いわ、俺渾身の裏声出したのに!…光、声掠れとるなぁ。



「あ…なんや謙也さんかぁ。」
「なんやとはなんや」
「すみません。リダイヤルでねーちゃんにかけたつもりやったんやけど謙也さんにかけてしもた」
「ええよ。光風邪ひいとるん?」
「あー。ちょぉ熱出てもて」



光の怠そうな声で胸の奥がきゅーってなる。光は強がりで、それで頑張り屋さんやから体調悪いときも無理しすぎるんや。
こんなとき、距離があることへのもどかしさを感じる。光が具合悪いときとか心細いときとか、傍におってやりたいのに。



「光、大丈夫なん?」
「はぁ、まぁ寝とれば治りますわ」
「ホンマ?しんどい?」
「ふ、謙也さんのが死にそうな声しとる」
「やって心配やねん」
「ありがと。バイト頑張ってください」
「うん…」
「………声聞けて、ちょっと安心しました。」




もうだめやねん。俺ってまだまだガキやねん。好きな子が自分を求めてくれるときは全部投げ出してでも会いたいって思ってしまうねん。単純。単細胞。無責任。せやけど光に会いたい。近くにおりたい。



「……決めた。今からお前んとこ帰る」
「は?」
「遅くなるけどちょぉ待っとってな!光のおかんにも行きます言うといて!」
「はぁ?!ちょ、謙也さん?」




そこからは速かった。仲ええバイト仲間に連絡して頼みに頼んで今日と土日交代してもらった。大急ぎで新幹線のチケット買うて飛び乗った。光や光のご家族に迷惑かかるよなぁ、て新幹線の中で思ったけど、もうあかんねん。光、めちゃくちゃ寂しそうな声しとった。「謙也さんに傍におってほしい」て聞こえた気ぃしたんやもん。



新幹線で3時間弱。自分の家にも行かずに真っ先に光ん家に直行する。光のおかんは「わ、ホンマに来た。さすが謙也くん!」て笑って入れてくれた。物凄い有り難いことやと思う。鋭すぎるお兄さんの目は俺は見てへんってことにする。



「うわ、ホンマに来た」



光は光のおかんと同じ台詞を全然違うトーンで言った。顔真っ赤。目は虚ろでぼーっとしとる。俺は駆け寄って額から垂れる汗を拭いてやった。



「光大丈夫か?」
「大丈夫やわ。ただの風邪や。」
「せやけどめっちゃ苦しそうやん。遅なってごめんな」



光はため息を吐いて俺に諭すように話し始めた。



「あんなぁ謙也さん。直感のまま動く癖ホンマに止めた方がええよ」
「え?」
「今日バイトやったんやろ。働いとる人に迷惑かけたらあかんやろ?」
「う…」
「それにお互いまだ学生や。あんたもバイトしとるからって大学行かせてもろてんから考え無しにお金使ったらあかん。新幹線代結構するやろ。ただでさえあんまり会えへんねんからちゃんと計画立ててゆっくり会えた方が俺も嬉しいっすわ。風邪ひいとるときに来てもなんもでけへんよ」
「………ごめんなさい」



光の方が断然俺より大人やと思う。全部正論で言い返す言葉もない。




「せやけどな、」
「…………」
「来てくれてめっっっっちゃくちゃ嬉しかったから許す」









「ひ、ひかるぅ〜〜!!」
「うわ、今のユウジさんみたいでキモい!」
「そんなかわええ光にはちゅーしたる!」
「風邪移ってもいいならええよ」
「アホ。そんなん余裕やし」








光に寂しい思いはさせへん。何かあったらすぐ駆け付ける。
やっぱり俺はこれを口だけで済ませたくない。光は怒るかもしれないけど、光がしんどいときはいつだって光の傍にいてやりたい。こんな距離どうってことないって、光にも常に思っとってほしい。




「なぁ謙也さん、今日泊まってってな。あ、風邪移っても知らんけど」
「おん、そのつもりで来た。ずっとぎゅってしといたるしな!」



まだまだガキで、金も無くて、アホで、頼りない俺やけど、いつやってお前に一生懸命やからな。そこんとこは忘れんといて。


とりあえず今夜は普段直接言えない分、たくさんたくさん好きやって言おう。体温の高いほっぺをむにっと摘むと「謙也さん、すき」て呟かれた。


あーあ!先越された!











***

…遠距離って言ってるのに!うちの謙也さんは耐えられませんでした←
そして性懲りもなく風邪ネタ挟んですみません大好きなんです…
都さま、リクエストありがとうございました!





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