僕に翼はないけれど




四天に愛される光でプラトニックな感じの謙光オチ
えむさま
(捏造含みます)













俺達が果たせなかった全国大会優勝。俺は悔いは無いものの試合に出ることも出来ず(まぁ自分のエゴのせいだが)、自分たちが叶えられなかった夢を光と金ちゃんに全て託した。


光は、「そんな夢託されるのは、重すぎます」とぼそりと一度だけ言った。しかし、俺らの前で光が弱音を吐いたのはそれっきりやった。光は全力で部長の仕事にのめり込んでいき、どんどん逞しくなった。



俺と光はいわゆる恋人同士というやつで、俗に言う女役は光やった。せやけど基本的に光は男前で、「辛いことあったらなんでも言うてください」なんて俺に言った。うわ、かっこよすぎやん。


そんな光の存在は、受験生の俺を力付く支えてくれた。少ない会える時間の中で、愚痴を言わせてもらったり、甘やかしてもらったりした。頼らせてもらってばかりで、俺は光が弱音を吐かないからって弱気にならないわけじゃない、なんて簡単なことに気が付かなかったんや。

















俺達は高校生になって、光の代が三年、金ちゃんの代が二年になった。そして迎えた、全国大会。俺達卒業生もみんなそろって応援に行った。




四天宝寺は決勝戦までコマを進めた。「頑張ってな!」と言った俺に「まぁ余裕で勝ちますんで見とってくださいよ」と光はいつもの様子で返した。



手に汗握る展開やった。俺達の年ほどの化け物はいなかったけど、やっぱり全国決勝や。実力は五分五分といった感じ。光はシングルス3で勝利を収め、勝敗の行方は金ちゃんのシングルス1に託された。


みんなが歓声をあげる中、財前部長だけはじっと黙っていた。金ちゃんの動き回る姿をじっと見てた。握りしめた拳は、此処からでは分からないがきっと震えているのだろう。神様。どうか、どうかお願いします。頑張れ、金ちゃん…!
















金ちゃんが打った打球が、相手コートにたたき付けられた。
…………うちが、勝ったんや!!



みんな喜びの歓声を上げた。もちろん俺達も。光はというと、膝をついてしゃがみ込み、泣いた。



副部長が光を支えるようにして立たせ、みんなの元へ連れていく。光はもう一人では立てないくらいに泣いていた。人前で弱い姿を見せたことはなかったけど、ホンマはずっとずっとずっとずっと辛かったんや。ずっとずっとずっとずっと、頑張ってきたんやな。



部員達全員が光を囲む。財前部長!財前部長!って。なんや、ホンマにええ部長やったんやん。光は涙で詰まった声で「ありがとう」と言った。















しばらくして、金ちゃんと光が俺達卒業生のところにやってきた。光は泣きっぱなしで、さっきまで元気やった金ちゃんも白石を見たとたん眉を下げて「白石ぃ」と泣いた。



このメンバーでここに集まると、あの日のことが鮮明に思い出される。みんなぽつりぽつりと、財前部長に声をかけた。






「財前、ホンマによぉ頑張ったなぁ。ありがとう!」
光がメンバーの扱いが上手やとひそかに憧れていた健二郎。



「財前はん、本間に立派やったで。」
光がすごく尊敬していた銀。



「光くん、かっこよかったばい。おめでとうね」
最後の試合のことをずっと気にしていた千歳。



「さすがうちが見込んだ男やわ!!光、男前やったで!」
なんだかんだ言って光が慕っていた小春。



「…っ、う、ひっく、ざいぜん、おめでとぉ……!」
喧嘩ばっかりしとるけど、あいつは弟とみたいや、と言ったユウジ。



「わい、ホンマに光と一緒にやれてよかったわ!!」
昔から光の傍におって、ずっと一緒に頑張ってきた金ちゃん。



最後に白石が、光の元へ行って、そのまま優しく抱きしめた。





「財前。俺は、お前が大好きや。俺だけやない、みんなみんな、お前が大好きや。お前ほど完璧な部長、どこにもおらんわ。俺たちの夢を、叶えてくれてありがとう。」





光はまたそのまましゃがみ込んでしまい、それを見てみんなで笑った。泣きながら、笑った。


















「…終わったんですね」
「せやな。お疲れさん」
「むっちゃ頭痛い」
「光泣きすぎやねん」


会場の裏の公園で二人、ブランコに座る。みんなは流しそうめんに行ったけど、光が今日は俺とふたりのがいいとかかわええこと言ったから抜けてきた。






「光、ずっとめちゃくちゃ頑張っとってんなぁ」
「そりゃそうやろ。俺だけやない、みんな頑張ってましたわ」
「いや。テニスももちろんなんやけど、部長さんとして」
「はぁ。まぁ白石部長からいろいろ教えてもらって引き継いだわけやし」
「ごめんなぁ」
「なにがやねん」
「いや、もっといろいろ気づいてやればよかったなぁって」
「いらんわ。うざい」
「酷!!」
「それに、いつも横におってくれたやないですか」
「え?あ、うん。やって彼氏やし!」
「それだけで充分です」
「……そ、っか。」
「うん」
「はは、かわい」
「うっさい」
「………」
「………」
「謙也さん、」
「なん?」
「これで、行けそう」
「どこに」
「謙也さんと同じ高校。多分推薦貰えるやろ」
「……お前、そんなこと考えとったん」
「やって、やらなあかんこと残っとるやろ」
「え、」
「ダブルス」



俺はたまらなくなって、ブランコから降りて光の腫れた瞼にキスを落とした。光も俺の顎らへんにちゅ、てお返し。「ごめん」なんて、もうたくさん言ったから。せやから今は、抱きしめるだけで充分。







「なぁ光」
「なんすか」
「白石がさ、みんなお前のこと大好きやって言っとったけどさ、俺は大大大大好きやからな!」
「あっそ」
「あっそ、て…冷たいやっちゃ」
「俺もです」
「へ?」
「俺も、同じ気持ちです」




俺もお前に負けないように頑張るよ。せやからさ、今度は絶対ダブルスしよな。俺はお前がしんどいときに気づけへん阿保やけど、ずっと傍におるからな。


これから秋、冬、春と季節は移り行くけど、繋いだこの小さな手はずっとそのままであるようにと願いを込めて、こめかみにくちびるを寄せた。









***

なんかリクエストいただいたのに捏造まみれで自分の好き放題やってしまってすみません…!
財前部長が書きたかったんだ…!
この謙光はプラトニックです!!!←
えむさま、リクエストありがとうございました!





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