すきなひとができました。
当サイト20万打記念の謙にょた光
フリー配布していたものです。
光が、変わった。
いつもジーパンで適当な格好かはたまたジャージか、俺の嫁のお下がりしか着なかった光が、女の子らしい服装をしている。
雑誌と言えばゲームの攻略本くらいしか買わなかった光が、今時のファッション誌を一生懸命読んでいる。
一万円あったら確実に新しいゲームソフトを買っていたであろう光が、綺麗なネイルアートが施された爪をうっとりと眺めている。
常にすっぴんだった光が、まつげをばさばさとさせている。
そして何よりも、漫画の新刊が出ない限り休日家に篭りっぱなしだった光が、朝からオシャレをして出掛けるのだ。
「…………もしかして光、恋か?恋なんか?!」
誰かが俺の光を女にしようとしている!!
決戦の日は早々にやって来た。
「この人、謙也さん。うちの彼氏。」
「どうもこんにちは!」
光、なんやそのまっきんきん頭のガタイのええ兄ちゃんは!弱みでも握られとるんか?!
俺は多分引き攣っているであろう「こんにちは」を返してリビングに戻った。はぁ、気分はブルーや。この感情は失恋に似ている……。
「って妻子持ちが何言うとんねん!!」
「痛っ!!」
「そんなに気になるんやったら光ちゃんの部屋にお菓子持ってってや」
強い。流石俺の嫁。
光の部屋にそーっと近付く。ひかるぅいやんやめてけんやさんあはんな展開になっとったら殴り殺すって思ったけど、そんなことはなさそうやった。
「光のお兄さん、かっこええな」
「ふふ、ただの馬鹿兄貴ですわ」
「……なんか俺、お兄さんに嫌われとんのちゃうかなぁ」
「え、なんで?」
「いや、さっき挨拶したときあんま俺のこと気に入ってなさそうやったし、かわいい光のこと奪ってもうたわけやしな…」
「そんなことないですよ。兄ちゃん、きっとうちの幸せを祈ってくれますから」
俺はぼーっと考えてみた。光の幸せについて。俺が嫁と出会って、かわいい息子が生まれて。あぁ、これが幸せか、なんて思ったんやったっけ。光も俺が知らん間に、大人になっとったんやなぁ。
謙也くんとやらが帰ったあと、光は俺のところへやって来た。
「やー…光が男連れて来るなんてなぁ」
「ふふ、なによー。」
「大人になってもうたんやなぁ」
「せやで!もう20やもん!」
「光、謙也くんってどんな子?」
光はかわいくかわいく笑った。
「今まで光が好きになった中で、一番お兄ちゃんに似とる人!」
俺は自他ともに認めるシスコンやけど、光も結構ブラコンやなぁ!
俺はお前の兄ちゃんやから、たったひとりの兄ちゃんやから。光の味方でおらんとあかん。光が幸せでいられるように、光が泣かないように、見守ってやらんとあかん。
後日。うちに遊びに来た謙也くんは、「光のお兄さん、こんにちは!」と元気に言ったから、「長いから光の、って付けへんくてええで」って言った。そしたら泣きそうな顔で「お、お兄さん!」って言われて、少しくすぐったい気持ちになった。
謙也くん。どうかうちの光を、世界で一番幸せな女の子にしたってな。
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