世界で一番甘くない口づけ





7万打フリリク企画
謙光前提の四天×謙也で貧血謙也さん(謙也さんが目を覚ますまでの描写を詳しく)
サトルさまリク
(相手は千歳にさせていただきました)











ふわふわ、ふわふわ。
頭に中はもはや正常に働かなくて、しばらく体を起こせそうにも無い。まぶたを開けることも今はちょっと厳しい。


新学期、始業式。
暑い体育館とか前日のハードな練習試合とか寝不足とか朝飯食い損ねたとか、多分いろんなのがごちゃませになって、俺は気がついたら意識を飛ばしとった。本来自分は健康優良児みたいなやつやけどちょっとした貧血持ちかもしれへんという自覚はあった。恋人の光には練習中しんどくなったときにそれを気づかれて、それからというもの光は俺を心配するのが日課になってしもた。


光は心配性やなーとか言っとったくせに、ちょっと気を抜いたせいでこんなことになって、周りに迷惑をかけてしまったことを申し訳なく思う。脳裏には光の泣き顔が浮かんだ。ごめん、光。ほんまにごめんなぁ。お願いや、泣かんといて。














頭がンガンする。せやけど涼しくて体はだいぶ楽やった。そんな時感じたのは唇に触れる柔らかな感触。あったかくて、幸せなそれは…光のじゃ、ない。


重たいまぶたを無理矢理抉じ開けてそいつの髪を掴んだ。その癖の強い髪は、



「ち、とせ…」
「謙也、目覚めた?もう大丈夫と?」
「それより、お前…」
「あぁ、謙也集会の最中に倒れてしまったけん俺がここまで運んだと。貧血と軽い熱中症っちせんせえ言うとったよ」
「千歳。俺が聞きたいのはそんなんやない。」



俺にはわからなかった。なぜ千歳が俺にキスをしたのか。千歳は白石と付き合うとるやないか。そんで、俺と光が恋人同士なんも知っとる。もしかしてさっきのは俺の夢やったんか?あんなにリアルやったのに?



千歳はいつもみたいなへらへらした笑顔や無くて、少し悪い顔して笑った。



「あぁ…さっきのちゅーのこと言っとると?ふふ、謙也は純情でかわいかね」
「おちょくっとんならほんまに怒るで。千歳」
「人聞き悪かねぇ。ぜーんぶ本気でやったとに」
「そんなん余計にあかんやろ!!俺には光がおって、お前には白石が…」
「…白石、ねぇ。ほんにええ子ったい。白石はほんなこつ俺のこと好いとうばい」
「せやったらなんで…!」



「ねぇ謙也、なんで俺が白石と付き合うとるか分かる?」
千歳は俺の耳元で、そっと囁いた。




謙也のこと大好きな俺が、謙也にもっと近づくために白石のこと利用させてもらっとるっち言うたら、信じる?






俺は気がついたら千歳の右頬をおもいっきりぶん殴っとった。でっかい声で怒鳴りつけてやろうかと思ったら、白石の声と、俺の大好きな光の泣き声がする。



「ほら財前、俺に捕まっとってええから。もうちょっと歩ける?」
「ひっく、うぅ・・・うぇ、けん、やさん、けんやさ、けんやさん…ひっく、うぅ、」
「大丈夫やから。謙也はそんな簡単に死なへんって」




「じゃあね、謙也。お大事に」


千歳はいつもの笑顔で保健室を出て行った。廊下で三人の声が聞こえる。


「千歳!!謙也は?」
「もう目覚めたとよ。思ったより元気そうやけん心配いらんばい」
「やって、光?聞こえとる?…悪いな千歳、今光混乱しとるから」
「ええけん早く行きなっせ」
「おおきにな千歳」
「…白石、今日部活帰り家来て」
「……あぁ、わかった」


保健室の中でひとり、いろんな気持ちが渦巻く。千歳は白石を大事に大事にしとると思っとった。せやのにこんなのって、どうすればええのかわからへんしきっと俺にはどうすることも出来へん。そんなことを考えとったら光と白石が保健室のドアを開けた。


「謙也さん…!」

光はふらふらで顔を真っ青にして、どっちが病人やねんっちゅー状態やった。ぼろぼろ涙をこぼして俺に倒れこむように抱きついてきた。こんなんになるまで俺のこと心配してくれとる光のことが愛しくてほんまにどうしょうもなくて。


「光、ごめんなぁ。俺は光から離れていかへんからなぁ」



千歳の気持ちもわからへんし、白石にもさっきのことを伝える予定はこれから先も、一生無い。いろんな人の気持ちが交錯している世の中だからこそ、俺はただひたすら、どんな犠牲が発生したとしても、光の気持ちを何よりも大切にしてやろうと、思ったのやった。








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リクエストありがとうございました!




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