幸福への扉





7万打フリリク企画
男前謙也さんと泣き虫乙女光の謙光で、光目線の同棲〜プロポーズ
杏さまリク












中学生の時に出会って、恋に落ちて、それは直に愛に変わった。同性同士という世間一般では受け入れられない恋愛に何度これは若気の至りや、て思おうとしたか分からん。せやけど俺は本気で謙也さんが好きやった。謙也さんも俺を好きやと言ってくれた。


高校を出ると同時に一緒に住み始めて、お互い社会人になった今でもそれは変わらない。…ただ、最近擦れ違いを感じたりもする。



謙也さんは医者にはならず、普通に毎日スーツ着て満員電車に揺られて会社に行っとる。俺はというとパソコンを使った作業が多い仕事のため家への持ち込みも結構あるから夕方には家におったり、少し遅くなったり。


謙也さんの仕事のが圧倒的に忙しいから、俺は家の家事を自分から率先してやった。謙也さんは俺が作った料理をうまいうまい言って食べてくれたし、洗濯をしても掃除をしても毎回ありがとうと言ってくれた。それがどうしょうもなく嬉しかった。



やけど最近の謙也さんの帰りの時間はかなり遅い。俺が寝てから帰ってくるくらいの勢い。前までいつも一緒に食べていた夜ご飯も最近はひとりぼっち。ラップしてとっとけば食べておいてくれるんやけど、朝俺が起きると謙也さんの姿は既にない。うまかったで、おおきにな!なんて書き置きをしてくれるのは嬉しいけど。


俺はこの人とずっと一緒におったから、一人の孤独をすっかり忘れてしまっていた。夜がこんなにも寂しくて、こんなにも長かったなんて忘れてとった。


「うぇ、ふ、っ…く、」
ぽろぽろ、ぽろぽろ。涙が零れる。俺はこないに弱いやつやなかったのに。謙也さんがいつも傍にいてくれたせいや。謙也さんがいつも愛してくれたせいや。全部全部、謙也さんのせいや。


ベットにダイブして大きく息を吸い込む。微かに香る謙也さんのお日様みたいなにおい。いつもなら安心するはずなのに今日はなんだか胸がかーっと熱くなって。


会いたい。会いたい。会いたい。俺は我が儘なんかな。一緒に住んどるのにこんな苦しい気持ちになるなんて。もっと、顔が合わせられるうちに愛してるっていっぱい言えばよかった。もっと素直に甘えればよかった。
それからも俺の目から涙は止まらへんくて、散々泣きあかした。目が腫れて不細工になるとか、もうどーでもいい。気にしたところで涙も止まってくれないし。














「ん……」
結局あのまま寝てしもたんや。げ、もう10時半やん。まぁええか、今日は土曜日やし。
そんなとき、横に感じる柔らかな温もり。


「けん、や、さん…」


見ると、スーツのまんまの謙也さんが寝とった。背広は脱いでほかってあったけど。皺なるで。


本間に仕事大変やったんやなぁ…。謙也さんは死んだように寝とる。そんな謙也さんの胸に顔を埋めると、さっきよりも断然強く感じる謙也さんのにおい。心に広がるのは、今度は安心感やった。



このまま一緒に眠ってしまいたかったけど、謙也さんが起きたときおいしい朝ご飯出してあげたいなって思って俺は起き上がる。



「あーあ。脱ぎ散らかしよって。」


床にほかってある背広やら靴下とかを広い集めながら、この人にはやっぱり俺がいてやらなあかんなぁ、なんて一人小さく笑う。靴下を洗濯機に入れて、背広をハンガーにかけようとしたとき、右側の方が重たいことに気付いた。謙也さん、ポケットに携帯入れっぱなしやん。


背広のポケットから、携帯を取り出す。…その時、見つけてしまった。一緒に入っていた小さな小さな箱を。


「う、そ…」


震える手でその小さな箱を開けると、シンプルなデザインの指輪。これって、もしかして、もしかせんくても…!


涙がぼろぼろ出て来るのを、俺は止められへんかった。やって、こんなん反則やんか。最近帰り遅かったのもこうゆうのんいろいろ計画しとったんやろ?指輪も高そうやし、もしかしたらお金を作ってたのかもしれん。阿保め、かっこつけやがって。こんなん、かっこいいやないか…!!


きっとかっこつけの謙也さんは、ベッタベタなプロポーズの言葉を考えとるんやろう。せやから俺は何にも気付いとらんふりしてやらないと。早く早く、涙よ止まれ。



長いこと一緒におってたくさんぶつかったけど、今日まで繋いだ手を離さなくて本当によかった。これからもいろいろ悩んだりするやろうけど、謙也さんがおるだけで俺の人生は、きっと、誰よりも幸せ。

涙を止めなきゃいけないはずなのに、謙也さんと一緒におる未来を想像したら幸せすぎて、また頬が濡れた。









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リクエストありがとうございました!





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