愛をくれたひと





7万打フリリク企画
謙にょた光で中学時代付き合っていた二人がすれ違いか何かで別れてしまうが、数年後(5年後位〜社会人位で)偶然出会い再び惹かれ合う
侑銀さまリク









大好きやった。本間に大好きやった。あの頃、光は俺の全てやった。太陽であり、神様よりも尊い存在やった。俺の世界はたしかに、光を中心に回っていた。
柔らかな髪。透き通る肌。大きな瞳。桜色の唇。素直やないとこ。時々見せる屈託のない笑顔。俺を呼ぶ声、声。

でも、光にとっちゃ全部全部過ぎたこと。俺にとっては過ぎたことやないだけで。



俺と光は、中学生の頃から5年近く恋人同士やった。俺は光のことだけが大好きやったし、光も俺を一生懸命好きでいてくれた。


俺は医者になるために、東京の大学に進学することを決めた。光と離れ離れになることは辛かったけど、俺は光以外に目移りする予定もつもりもないし、ふたりできっとやってけると思っとった。光も離れとっても俺が好きやと言うてくれた。



せやけど、光は想像以上に俺に依存しとったらしい。毎晩電話して毎晩泣いた。俺はそんな光も愛おしいと思ったけれど。

別れは、突然やった。



「うち、謙也さんおらんと何も出来へん女になってもうたんです。最近は謙也さんが他の女の子と仲良うなっとったらとか勝手に考えて不安になって。うっとおしいでしょう?ご飯も最近まともに食べれへんくて。こんな自分が本間に嫌なんです。もう、謙也さんを好きでおることが辛いんです。
謙也さん、うちは自分の足で歩いていける女になりたいんや。せやから、ここでさよならしましょう。……しましょうやないですね。さよなら、してください」



うっとおしいだなんて思うわけない。別れたくなんかなかったけれど。好きでおることが辛いやなんて言われたらもう何も言えへんよ。俺の存在が光を苦しめるなら、愛してるなんて言えへんよ。



大学無事卒業して、研修も終えて。俺は大阪に帰って来て、念願の医者になれた。そんな今も俺は光から卒業出来ずにいる。光は今幸せなんかな。ご飯食べれるようになったんかな。地元に帰りたい、て思っとったけど、帰ってこんほうがよかったのかもしれへん。この地は光との思い出が多過ぎる。
































転機は突然訪れた。


「忍足先生、これ次の患者さんのカルテです」
「あぁ、おおきに」



次の患者さんはまだ5才の男の子で、予防接種。カルテには、財前尚の名前。

財前ってちょっと珍しい名前やんな。いや、でもそんなわけない。そんなわけない、せやけど…。心臓ばっくばっく言うて汗がぶわーって出て来るんを感じた。




ドアが開く。注射にびくびくしとる可愛い顔した男の子が入って来た。うしろから着いてきたのは艶やかな黒髪を揺らした忘れもしない彼女。



「光……」
「どうも、謙也さん」



胸がかーっと熱くなる。ずっと好きだった人。今でも好きな人。世界一可愛い、光。



「ひ、久しぶりやなぁ。この子、甥っ子くん……なわけないよなぁ。もう大きくなっとるはずやし。……ひょっとして、光の…?」
「そんなわけないでしょ。優の弟です。せやからこの子もうちの甥っ子」
「そうなんや…」


とりあえず甥っ子2に注射を打つ。光、何を根拠にそんなわけないって?もう結婚しとっても子供がおってもおかしくない歳に俺らはなったんやで?お前は自分で歩いて行ける女になりたいと言った。彼氏はおるんかとか今何しとるんかとか、聞きたかったけど何一つ聞けへんかった。未練たらたらやな、俺。


甥っ子2は注射の痛みを我慢して泣かなかった。「せんせ、おおきに!」って笑ってくれたその顔はやっぱり光に似とる。


「光」
「ありがとう、ございました」
「顔見れて、よかった。なんやおおきにな。」
「……。」
「お前この時期よう風邪ひくんやから気ぃつけろや。…って、何年前の話しとんねんって感じやな」



次の瞬間、光の目からぼたぼた涙が出て来た。「ひか〜?おれ、あんまいたくなかったで!なんでひかがなくの〜?」って甥っ子2は光を覗き込む。俺は思わず看護師さん呼んで甥っ子2預かってもらってしもた。


「光…」
「っ、うち、自分一人でなんて、歩けへんかった…っ」
「……。」
「別れたあとも、ずっと、けんやさんのことばっか考えて…謙也さんのおかげで、今まで、歩いてきたの…っ、」
「え、」
「自分から言い出したのに、本間、阿保ですよね…」


光は昔みたいに泣いた。まるで、さよならをしたあの日のように。お前阿保ちゃうか。俺たち別れて何年経ったと思っとんねん。なんで今でも俺のこと好きでおってくれるん?



「ひか」
「…っ、ごめんなさい」
「俺、今まで一人で歩けたことなんかないで。いっつも俺の心には光が住んどって、なかなか出てってくれへんねんなぁ」
「え…」
「せやけど、一人で歩けるから偉いとか、そんなことないと思うねん。俺、光以外はやっぱり要らんのや。ずっと光だけが欲しかった。もうずっとこっちにおる。お前から離れてなんかいかへんよ」
「謙也さん…!」


「光、もう一回俺と歩いていこうや」



それから光は言葉を上手く紡げへんみたいで、頭を上下に振ってぼろぼろに泣き続けた。



どんなに遠回りしても、いい。もう俺には隣で笑っててくれる君がいるから。

次離れたい言うても絶対に離してなんかやらんからな。もう二度と触れることは出来ないだろうと思っていた桜色の唇に、優しいキスをした。









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リクエストありがとうございました!





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