哀しても愛してたいの





7万打フリリク企画
謙光で謙也が何かしらで思いっ切り光を傷つけてからのハッピーエンド
琴波ミナトさまリク











最近の俺は、酷く苛々していた。
俺は光のこと本間に好きやし、大事に大事にしとるつもりや。いつも好きやって言うて、全力で愛しとる。


せやけど光は、本間にユウジと仲ええねん。俺が先に合宿行っとる間にめちゃくちゃ仲良くなっとった。相談をするのもユウジ。俺と喧嘩したとき泣きつくのもユウジ。ユウジもユウジや、光のことなんやかんや可愛がって。本間腹立ってしゃーないねん。なんで伝わらへんのやろ。




ある日、俺は今まで抑えとった怒りを爆発させることになる。

光とは最近、しょっちゅう帰りが別々になっとった。「用事あるんで」なんて言うた光をやっぱり俺は信じてやりたくて、笑顔でええよ、て言っとった。信じてやりたかったのに。


帰り道、楽しそうにしとるユウジと光。ぎりぎりまで近付いたけど、よう聞こえへん。ただひとつ聞こえたのは、光のこの台詞。


「ユウジ先輩、何度も付き合ってもらってすんません。おおきに」








あぁ、最近ずっとユウジと一緒におったんやな。頭の中は不思議と冷静になっていった。なんや、本間阿保らし。俺は光の彼氏ちゃうんか。光にとって俺ってその程度やったんか。










***










次の日の放課後。俺が部室に入ると光は真ん中に置いたる椅子に座っとった。…微笑んで、手元のネックレスをいじりながら。


「あ、謙也さん!」
「…おう」
「あの、今日…一緒に帰りましょ」
「無理や」
「…ほな、ええです。明日とかはどうですか?」
「一生無理やっちゅーねん、分からんか」


光の表情がピタッと固まる。想像以上に低い声が出て、いつも大切に大切にしてきた光にキツイこと言うんも不思議と苦やなかった。


「な、なんで…」
「光、もううんざりや。俺はお前の玩具か?馬鹿にすんのも大概にせぇよ」
「俺、謙也さんのことそんな風に思ったことなんて無いっ!!」
「もうええねん。お前の話なんか聞く気せぇへんわ。勝手に何処へだって行けばええやろ。これからは全部ユウジに面倒見てもらえや」
「は?なんでユウジ先輩が…」


「とぼけんのもええ加減にせぇや!!」


おもいっきし机叩いたら光はびくってしてネックレスを床に落とした。カシャン、て間抜けな音が響く。


「俺がそこまで温厚やと思うか!?ユウジとそんだけベタベタしとってお前は俺まで欲しがるんか!?…は、しょーもない奴やな」
「……ユウジ先輩は、関係ないですやろ…」
「じゃあなんなん?お前は誰にでも簡単に股開くんか。もうお前なんか信じれへん」


床に落ちたネックレスを踏み付ける。すると光の顔はどんどん青ざめて今まで我慢しとったやろう涙がぼろぼろこぼれ落ちた。

それやってどうせユウジからもらったんやろ。



「…謙也さんが、俺のことどう思ってたんかよう分かりましたわ。俺の話もう聞きたくないんでしたよね。これは独り言やから聞かんでええです」


光が泣きながら言うた言葉に、俺は頭を鈍器で殴られたような気持ちになった。



「謙也さん、好きでした。そんで今もめっちゃ好きです。ユウジ先輩のことも何を勘違いしとるか知らんけど何でも無いし、俺は誰にでもケツ貸せるほどタフやありません。第一男のあんたを好きになった時点で死ぬほど悩みました。せやけどあんたやったから、世間も周りの目も捨てて一生好きでいようと思いました。いつも素直になれへんくてごめんなさい。言いたいこと上手く言えへんくてごめんなさい。…これからも、ダブルスだけは一緒にやらせて下さい。ちゃんとただの後輩に戻りますから」


光は涙でびしょびしょの顔で微笑んで、俺がさっきまで踏み付けとったネックレスを手にとって。ぐっと力を込めてチェーンを引きちぎった。チャームが床に散らばる。光はそのまま部室を飛び出した。


「お前本間世界一の阿保やわ。死ねばええんちゃう?」

呆然と立ち尽くす俺に、一部始終を見とったやろうユウジが現れて、淡々と話し始めた。




「そのネックレス。光がお前のために手作りしたやつやで」
「嘘や…」
「俺の親父のデザイナー仲間が副業でシルバーアクセ作っとんねん。俺はその人と昔から顔なじみやし、財前が一人やどうも不安やー言うから着いてってやっただけや」
「そんな…」
「お前ら、付き合ってもうすぐ一年なんやろ。あいつお前のためにめっちゃ頑張っとったんやで。まぁ今や粉々やけどな」
「………っ、」
「なぁ、なんで財前のこと信じてやれんの?」



俺、本間に自分のことばっかやったんやな。光のこと信じてやれんくて、一年記念なんて忘れとった。光を傷付けることをめちゃくちゃたくさん言って。本間俺一遍死ぬべきちゃうか。



「そこの阿保。俺がここまでやってやったのにまだ分からんのか。早く財前追い掛けろや」
「……俺にそんな資格あるんやろか」
「はぁ?」
「光のことこんな傷付けた俺に、そんな資格…」
「なら俺が財前とってもええん「嫌や!!」



嫌や。光、ごめん。離しとおないよ。謝っても謝りきれん。許して欲しいなんて言わん。せやけど俺、光に言えてない。俺もお前が好きやって言えてない。


「ほんならその散らばっとるやつ拾ってさっさと行けや」
「ユウジ、おおきに!」




俺は光の元へと急いだ。








***








走って走って、光を見つけた時、光はだーだーに泣きながらしゃがみ込んどって。その手には、俺が台なしにしてもうたのと同じデザインのネックレス。次の瞬間、光はそのネックレスのチェーンに力を入れて、壊そうとした。


「光!!」


酷く怯えた顔で俺を見た光。そのまま光に駆け寄って肩をぐっと掴む。その時思った。俺は光に謝る資格があるんやろか。許してもらえる資格があるんやろか。ごめんだなんて、言っていいのかな?










「光、愛してる。愛してる、愛してる…本間に、愛してる…」
「謙也さん…」
「……ホンマ、ごめん」


あんだけ傷付けたのに自然に出て来てしまった愛してるという言葉。我ながら都合よすぎやろ。しかも結局謝ってもうたし…。


そんなこと思っとったのに、光は嬉しそうに笑ってくれて。


「俺も、傷つけてごめんなさい。」
「光…」
「せやけどめっちゃショックやったんですからね。死んでやろかと思った」
「そ、そないなこと言わんでや…」
「ホンマこれからは当分言うこと聞いてもらいますから。謙也さんは俺の犬決定や阿保」



そんな馬鹿犬な謙也さんには首輪あげます、て光はネックレスを俺の首にかけてくれた。本間はペアにしたかったんやろ?ごめん光。本間にごめんな。




これから馬鹿で阿保で嫉妬深い俺はまたお前を傷付けてまうかもしれん。せやけど、俺はお前のことが本間に好きなんやってことは、分かってほしい。


涙の跡でいっぱいの光の頬を、馬鹿犬な俺はぺろりと舐めた。
これからは、この柔らかな頬が濡れることがないように、こいつを大事にしようと思った。









-----------------------
リクエストありがとうございました!





- 31 -


[*前] | [次#]
ページ:




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -