tell the truth,




大好きな苑架ちゃんへ!


※謙也高3、財前高2










『tell the truth,』




「するめ〜…うぅ、するめ…ごめん…」


謙也さんがなんでこんなに泣いてるかと言うと、飼ってる金魚が死んだから。名前はするめ。意味分からん。

死因は事故と言うべきやろか。どうもペットのイグアナが脱走して、食べてまったみたいや。ちなみにイグアナの名前はもずく。いや本間に意味分からん。


その金魚は今年の夏祭り俺が掬ったやつ。謙也さんはポイを動かすのが早過ぎて金魚を一匹も採れんかった。俺は甥っ子に頼まれとったからそれなりに掬っとって。そん中から一匹あげたのがするめやったっちゅーわけ。

俺は金魚の世話をさっさと甥っ子(まぁ厳密に言うと大変なのはねーさんやな)に任せてしまったが、謙也さんは大事に大事に育てとったらしい。



この人は優しすぎる。いくら大事にしとったとはいえ金魚が死んでこれだけ泣くんや。全然、医者は向いとらん。きっと患者さんが亡くなる度にどんな理由であれ自分を責めるやろう。


白石部長から、謙也さんが東京の医大のパンフレットをこっそり持ってたことを知らされた。謙也さんのおとんは医者や。継いで欲しいと思っとるに決まっとる。

(俺から、離れてく?)




「なぁ、光」
「なんすか」
「俺、医者なろう思ってん」

泣き終わってようやく落ち着いたかと思ったらこれかい。なんちゅータイミングや。微塵の期待も許されんってことですか。今日は別れ話って訳ですか。今なら泣けそう、金魚が死んだことについて。


「東京行くんですか」
「なんで?」
「東京の大学に行くんでしょう」
「え?光何言っとんの?」


俺はずっと光の傍にいるっちゅーねん。まぁおとんの跡継がへんのは悪い思っとるけどなー。
謙也さんはニカッと笑って言った。


「俺がなりたいのは、動物のお医者さん」



なんちゅー顔しとんねや、って頭をくしゃくしゃ撫でた。

「京都に良い大学あんねん。まぁ今まで通りチャリ通ってわけにも行かんけどな」
「東京の大学、は」
「あ、もしかしてパンフ見た?あれな、おとんが侑士に送っときやーて俺に押し付けてん」


あぁなんや。俺ばっかまた心痛めて本間馬鹿みたい。

「光を一人には出来んよ。ほら、中学ん時の選抜合宿んときお前やばかったやん。なんや痩せとったし。やっぱ光は俺がおらんとあかんなー!はは、とか言って…」
「そうですよ。俺は謙也さんがおらんと飯も食えんくなる馬鹿です」
「え、ひかる?」
「よう寝れんくなって目の下にくま作るような馬鹿です」
「………」


「傍に、いてください」




反応が無いもんやから俺重かったかな、なんて不安になって謙也さんの顔覗いたら、また泣きそうな顔しとった。


「謙也さん、なんで泣きそうなんすか」
「うっさい阿呆、あれや、するめが死んだからや」
「嘘や、さっきまで笑っとったやんか」
「光こそ泣きそうやん。…ってかもう泣いとるやんお前」
「黙ってください。俺はするめが死んだのが辛いんすわ」


謙也さんが泣きそうな顔しとったのは一瞬で、抱きしめられたら謙也さんのにおいに涙腺やられて、結局俺だけが泣いてまった。



耳元で「俺がさっき泣きそうやったっちゅーのは、本間は光が可愛えことばっか言いよるから、なんや感極まってん」なんて言うもんやから、これみよがしに謙也さんのシャツで涙を拭いてやった。



「謙也さん」
「なん?」


「来年も、その次も、一緒に金魚掬い行きましょね」

甥っ子が大きくなって、もう金魚なんいらんってなっても、ずっと謙也さんと夏祭りに行けたらええな。







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あいらぶ苑架ちゃんへ捧げます!貰ってくれてありがとです^^


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