おめでとう。これからも、ずっとずっと大好きな君へ。



企画提出作品
2010年光誕Webアンソロジー「HikaruZaizen MANIAC」に提出したものです。
※桃城×光。性描写有り












ほぼ同時期に生まれたくせに、性格も見た目も何もかも違うように造られた俺達。まぁ当たり前と言えば当たり前なんやけどな。
ヒトが惹かれる人は2種類で、片方は自分と似たタイプの人間。もう一方は自分とは正反対の人間らしい。自分を好きになりきれない俺だから、お前を好きになれたのかなって思う。
















「ふ、んぅ…」
「光、お前可愛すぎ」



初めは啄むようにくっついたり離れたりしてた唇は、いつの間にかゆるゆる舌を絡められて。気がついたら頭がぼーっとするくらいにはこいつに侵食されてた。


自分の部屋なのに、俺の恋人であるこいつ…桃城武がおるだけでとてつもない聖域なんやないかって思えてくる。口の端から零れるどっちのものかわからなくなった唾液だって、桃のが混ざってるなら本当は一滴も零したくなくて。そのくらい俺にとって、こいつとの時間は幸福やった。




俺の誕生日は7月20日。桃は23日。要するに、調度真ん中に当たる日にちが無い。だから、7月21日が22日に変わる瞬間。それが俺たちの真ん中バースデーだな!っていつもみたいに明るい声を電話で聞いたのが一週間くらい前。誕生日なんてどうだっていいから、会いたい。やからその時は「そんなこと言うたって、会われへんやんか」って思わず言うてしもたんや。


21日の部活後。謙也さんらと帰ろうかと思ってたのに、校門からユウジ先輩の「あー!桃やん!!なんでおるん!?」って声が聞こえて。急いでそっちに走ってったら「よう光!会いに来てやったぜ〜!」って笑って言われた。部活サボってきたから帰ったら手塚部長に殺される〜なんて言うとる桃を笑い飛ばしてやりたかったのに。今まで寂しかったのとか、嬉しいのとかがごちゃまぜになってみんなおったのにわんわん泣き出してしまった。


そんな今は、真ん中バースデーとやらの真っ最中なわけで。




「ぅあ、は…ぅん、んっ」
「ひかる、声聞かせてくれよ。あと顔も見てぇんだけど」
「や、やぁ…は、ぁ」



桃の、俺よりもごつごつした手が俺の体に触れる。触れるか触れへんかくらいの柔らかいタッチで俺を触る。何処を触られても息が上がって。嫌だ、自分のいつもより高いへんなこえ。俺やって久しぶりで恥ずかしいねん。顔を隠してた手は簡単に掴まれてしまう。照れ臭くて目は開けられない。



「光、気持ちいか?お前の体、いつもより熱い」
「ん、はぁ…知、らん…わ、あほ…っ」
「今日くらいちゃんと言ってくれよ。俺は気持ちいぜ」
「っ、ぁあ、ふぁ…!」


耳をねっとりと舐められながら乳首をいじくられるといよいよ辛抱ならんくなって。きっともう声も止められへん。腰らへんにおっきくなった桃ちゃんがぐりぐりあたってる。視界が生理的な涙によって歪んできた。お前ずるいよ、桃。





要するに、堪らないんだ。いつだって溢れそうなくらいに好きなのに、言葉に上手く出来ひん。言ったら本間に止まらなくなってまう。気持ちいとか、寂しいとか、会えないのは辛いとか、他の誰とも関わってほしくないとか。桃を構成する全てが愛おしくて、少しだけ憎らしい。




「光、入れてもいいか?」



俺ん中を散々太い指でぐにぐに慣らして、今日一番のイイ顔でそんなこと言ってくる桃。前から思ってたけど、こいつの触り方って案外乱雑だ。感じてしまう俺も俺だけど。この時には俺はもうひたすら桃を感じるだけで、返事をすることもできへんかった。俺が抵抗してこぉへんのを肯定と受けとって、桃は自分のを宛てがった。




「んはっ…ぅあ、」
「光、力抜いて」
「ん…ふぅ、ん、く、」
「そう、いい子」
「………ん、んぅ…っ、」
「すぐよくしてやるから、な?」



優しい声色に反して、中でぐるりと円を書くように動かされて。気持ち良くて、でも1番気持ちよくなるとこがあること分かっとるからどこかもどかしくて、無意識に腰が揺れてしまう。


瞼をこじ開けて定まらない視点を無理矢理桃に合わせた。羞恥なんてとっくにどこかに置いてきた。






「……もも、早く」









「っ、お前、可愛すぎ!」
「……んひゃあ!ふぁ、ぅあ、ぁあ、んっ…」
「は、やべ、たまんねぇわ…っ」

この時の桃の顔が、めちゃくちゃ好きなんや。ガツガツ突き動かされる腰とか、雑に握られた手とか、顎から滴る汗とか、全部全部全部全部。
雑に動かされる腰使いに、俺は実は毎回こっそり嬉しくなる。女の子やないからこそ強引にしてもらえとるみたいで。まぁこいつはそこまで考えとらんと思うけど。


いつもみんなに屈託のない笑顔を見せる桃の、俺しか知らん表情。ホンマ、誰にもやらんで。



「も、もぉ…っもも、おれ、もうあかっ、んっ…」
「はぁっ、光…!たまには、名前で呼んでくれよな…!」



言わなきゃ。今日言わなきゃいけない、大事なこと。




「たけ…!あっ…おめでと、んぅ…た、んじょ、び…おめでとぉ…!」
「光…!」
「すき…たけ、すきやっ」


桃のはぐんと大きくなって、そのまま俺ん中に吐き出された。俺も自分の腹の上に出した。




「はー…やばかった。光、大丈夫か?」
「はぁっ、はぁ…」
「…光?なんでお前泣いてんの…?」



しんどいか?とかどっか痛いか?とか言うてくれる桃の台詞に首を横に振る。涙が出てくるのは、愛されてるっていう嬉しさと、また暫く会えないんやっていう寂しさ。でも一番の理由は、こんなにもこんなにも大好きなのに、全部を伝えられないから。どうすれば全部全部、伝わるの?


「光、あのな。お前が何が悲しいのかわかんねーけど、俺はずっとお前の傍にいるからな」
「…っ、ひっく、ぅ…」
「なかなか会えねーけど、光が寂しいんなら頑張って会いにきてやるよ!」
「っ、く、もも…」
「それでさ、将来は一緒に住もうな!俺お前のこと離してやんねーから!大阪来いって言うなら行くし、お前が行きたいとこあんなら着いてくぜ!絶対にお前と過ごせる環境に、俺がするから。ちなみに拒否権無しな!」


俺の涙を拭いながらそう言う桃に、「…じゃあ神奈川がええな」って意地悪して言うてやったら「神奈川はあかん!切原がいるじゃねーか!絶対だめ!!」て慌てだした。ふは、あかん!ってなんやねん。



俺はまだ、お前が生きて来た人生の14分の1しか知らん。せやけどこれからは、全部全部知っていこうって思うねん。


「光、誕生日おめでとーな!」
「おおきに。なぁ桃」
「んあ?」
「これから先もずっとプレゼントなんかいらんから、会いに来てや。やっぱり、その…寂し、い、ねん…」
「はは、やっと言ってくれた。俺だってめっちゃ寂しいんだぜ〜!」
「越前とあんだけべたべたしとってよお言うわ」
「なんだ光〜ヤキモチか〜?」
「調子のんな阿保」


桃はいつだって眩しい。ぴっかぴかの笑顔をいろんな人に振り撒いて魅せる。俺やって魅せられた内の一人。なんでこんなにこいつがあったかいか、最近分かった。こいつは、生まれながらに人を無条件に愛してやることを知ってるんだ。人に真っ直ぐに向き合えることは、桃の最大の長所。



「もも、抱っこ。そんでちゅー」
「随分甘えっこだなー!可愛いやつ!」
「しゃーないやろ。俺、もものこと大好きやねん。ホンマのホンマやねん。いつもはよぉ言えへんけど、今日くらい桃でいっぱいになりたいんや。次会うときまで負けんと頑張れるように。そんで桃にも、俺でいっぱいになってほしい。俺のこと忘れへんように。」
「…………」
「好きや……たけ」
「っ、……お前、反則だろ…。」



俺はとっくにお前でいっぱいだよ、て俺を痛いくらいに抱きしめる桃。俺はたまたま、この時代に生まれてテニスをしていてこいつに出会った。そしてたまたま男やった。悩んだ日も落ち込んだ日も泣いた日もあった。せやけど、やっぱり桃を好きになれてよかった。桃じゃなきゃダメやった。





















「忘れモンないな?」
「おう!お前、ちゃんと飯食えよ〜?」
「分かっとるわ」
「そっか、はは……」
「…………」
「うん…」
「…………」
「…やっぱ、寂しいな…」



桃を見送りにホームまで来た。この笑顔を暫く見られなくなるのは寂しいけど、俺はもう大丈夫。いっぱいいっぱい愛してもらったから。いっぱいいっぱい愛してるって再確認出来たから。


「じゃあ俺、そろそろ行くな?」
「………たけ、」
「え」

ちゅ


「なっ!ひか……!」
「次は俺から会いに行くから」



一瞬慌てた顔をした桃はすぐに笑顔になって、俺をがばっと抱きしめた。


暫く会えなくなるのは寂しいけど、俺はもう大丈夫。これからはもっと、自分の気持ちを言葉にして伝えようって、そう思えたから。







桃が無事出発したあと、残された駅で一人小さく笑う。
俺たちはお互い会いに行くのに交通費がかかる。それにまだ中学生やし、お金なんか全然持ってへん。せやから、今年の誕生日はお互いプレゼントは無しにしようって決めた。せやけど俺は約束を破って、桃のポケットにこっそりネックレスを入れておいた。あいつ、いつ気付くかな。






このときの何にも知らない俺は、部屋の机に残されたあいつからのブレスレットと汚い字で書かれた手紙を見て、大泣きすることになる。




(光、お前のこと本当に好きだ。ずっと傍に置いておきたいくらい。離れててもいつだってお前のこと考えてるって、信じてほしいんだ。
俺がお前に伝えた言葉は全部嘘なんかじゃねぇよ。今はまだガキだけど、だけど。死ぬまでお前と生きていきたいんだ。)




早く早く大人になるから、早く早く迎えに来てな。俺はもう、お前と過ごす未来しか想像出来へんねんで。ちゃんと責任とれや。ポケットのネックレスに気付いた桃が半泣きで電話してきたら、そう言ってやろう。


大好きなお前と、お前が大好きな俺へ。
HAPPY BIRTHDAY!





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