あなたのために生きてゆくの。





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月日の流れは、早い。


キラキラした金髪を靡かせてコートを走りまわっとった彼の髪は、今は暗めのブラウンに落ち着いた。背も幾分か伸びた。考え方も少し大人になり、昔に比べたら歩みも遅くなったように思う。


せやけど、うちが好きな笑顔も、うちを好きやと言うところも変わらなくて。うちらは変わったけど変わらなかったから、今もこれからも一緒にいられるのかなって思う。




うちは今日、この人と結婚する。同じ名字になって、同じ指輪をつけて、子供やって欲しいな。今日だけはうちは誰よりも可愛いんだ。やって、大好きなあの人の花嫁さんなんやから!


−コンコン
「光、入るで?」


女テニの部長やった白石さん。昔っから一緒で、困ったときは力になってくれたユウジくん。二人も今日は忙しい中うちらの式に来てくれたんや。

連絡は変わらず取り合っていても少しずつ会う機会自体は減ってしまった千歳さん、小春さん、金太郎、小石川さん、銀さん、オサムちゃんまで今日はうちらのために集まってくれとる。あぁもう、こんなに幸せでどうしよう。



「白石さん、ユウジくん。今日はわざわざありがとうございます」
「光、ホンマめっちゃ綺麗やわ…!」


ウェディングドレスを身に纏ったうちを、白石さんは抱きしめる。この日のために肩まで伸ばした髪も綺麗にセットされて気分はお姫様やった。白石さんは今も変わらず可愛くて、ずっとうちの憧れの人やねん。



「ユウジくん…うち、どうですか?可愛い?」


こんなおめでたい日にうちが唯一気にかかってしまったことは、ユウジくんやった。
ユウジくんとうちは親同士が仲良くて小さい頃から知り合いやった。ユウジくんはぶっきらぼうやけど本間はすごく優しくてよくうちの面倒を見てくれた。


一度、うちは謙也さんと大喧嘩をして別れかけたことがある。その時傷付いて疲れ果てたうちに、ユウジくんは「俺なら光を幸せにしてやれるのに…」言うて触れるだけのキスをした。うちはその日から、謙也さんへの罪悪感とユウジくんの気持ちを知らずに傷付け続けてきたことへのやり場のない感情で自然とユウジくんを避けてしまいだらだらと今日まで来てしまった。



「…ユウジ、くん?」
「ひか…ほんま、よかったなぁ…っ、く、絶対…幸せ、ならんとあかんで…っ!」
「ユウジくん…!」


ユウジくんは手で顔覆ってぽろぽろ泣き出してしまって。うちは思わずユウジくんをぎゅーってしてもうた。


「ユウジくん、ごめんなさい!今までずっとごめんなさい…っ!!」
「…っ、ごめんは、嫌やなぁ…」



「ユウジくん、ありがとう!うち、世界で一番幸せになるからね!!」



ユウジくんだけやない。いつでも力になってくれた白石さんにあったかい金太郎、頼りになる小春さんや優しい優しい銀さん、いつでも心配してくれた小石川さんと、落ち込んだとき慰めてくれた千歳さん、うちらを見守ってくれたオサムちゃん。みんなのおかげでうちは幸せになれる。幸せに生きていける。

そして、いつもいつでも溢れそうなくらいの愛をうちに与え続けてくれた、世界で一人だけのうちの王子様。


「ほら、ユウジ。いつまでも泣いとらんと」
「なっ、泣いてへんわ阿保!」


−コンコン ガチャ
「光ー!おめでとさんやでー!!」
「光ちゃん、綺麗ばい」
「うむ、天気も良好でよかった」
「財前も今日から忍足になるんやなぁ!」
「ブーケはアタシの方に投げてねっ!」
「…みんな、ありがとうございます!」


バタバタバタバタッ
「そろそろお婿さんの登場ね」
「あいつ相変わらず落ち着きないなぁ〜!」



ほら、うちだけの幸せが軽快な足音をたてて駆けてくる。これからもずっと謙也さんが謙也さんらしくいられるように、うちは側にいてあげますからね。まぁ、歩幅はうちに合わせてもらいますけど!



バンッ
「ひかるっ!!」



あぁ。うちはやっぱりこの人が、どうしょうもなく好き!!





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