恋巡り





由紀さまへ
2万フリリク企画
光→謙→蔵→ちと→光のループでシリアス







『恋巡り』



「おーっ光ー!」
「っす」
「なぁ、今日うちにゲームやりにきてやー。」
「またっすか」
「やって何回やってもクリア出来へんねんもーん」
「はいはい、分かりましたよ」
「よっしゃ!おおきに!」


この人は無自覚やから質が悪い。俺は謙也さんのことが好きで好きで好きで、大好きで。やから謙也さんが望むこと、なんだって叶えてあげたい。


「、あー…光、勘忍!ちょぉ待っとって!」

そう言って謙也さんは走ってく。向かう先なんて分かっとるよ。どうせ白石部長のとこやろ。
あんた、俺にゲームやれ言うたやん。でももし白石部長が「謙也、今日は一緒に帰ろうや」言うたら俺との約束なんて簡単に破ってしまうんやろ。

謙也さんは、狡い。優しいけどそれ以上に卑怯者や。それでも謙也さんを嫌いになんかなれる訳がなくて。


あぁ、何故。何故俺ばっかりが、報われない思いを抱えて。もう、待ってなんかやんないよ。早く早く、振り向いてよ。


謙也さんを好きになってからすっかり女々しくなった俺は、涙が零れる前に体育館裏へ駆けた。













「白石!どないしたん、難しい顔して」
「あぁ、謙也…」

部員の出席表を見ながら溜め息をつく白石。いくら鈍い言われとる俺やって分かるわ。

「千歳、全然部活来ぉへんやんか」
ほら来た。

「あー…あいつサボりすぎやんな」
「せやな」
「何考えとるか分からんし、一緒に居づらいっちゅーの」
「……おん」
「部活来ぉへんなら、退部してまえばええのに」
「…謙也!!言い過ぎとちゃう!?」


白石は千歳のことになると途端に余裕が無くなって。あぁ、千歳は狡い。そんで、めちゃくちゃ羨ましい。


「白石。今の嘘や、嘘。勘忍な」
「え…」
「もー白石も案外阿保やんな。会いたいなら会いたいって言わなあかんで。……あ、ほら。向こうにおるの千歳ちゃう?」
「謙也……」
「ちゃんと捕まえとかなあかんで……その、す、好きな奴のなら尚更やろ…な?」

「謙也、ありがとう」

ふわりと笑う白石はすごく綺麗で、可愛かった。その笑顔が俺を思って造られたものならどんなに良いか。

俺も大概阿保やな。いつまで親友ポジションおるつもりやねん。
好きな人を好きと言うことはなんて難しいんだろう。













「千歳!」
「おー白石ー」
「おー白石ー。やないわ」

謙也に背中押されて千歳のとこに走った。謙也は本間にええ奴やんなぁ。

ふらふらしてばっかで、テニスが上手くて、右目がほとんど見えなくて。千歳のどこに惹かれたのかって聞かれたら、きっと全部やって答える。千歳の片耳にだけ付けられたピアスになれたら、って何回思っただろう。


「お前、ええ加減部活来いや」
「んー」
「はぐらかすな」
「…白石は、俺んこと好いとるねぇ」
「は、」
「期待持たせたら悪いけん教えちゃるね。俺が白石を好きになる予定は、これからもずっとなかよ」


何時も穏やかな表情を浮かべとる千歳はどこにもおらん。
(目が、笑ってへん)


「白石ぃ。白石が部長として俺に部活に来て欲しい思っとるなら、」
「…………」
「これからは光くんば呼びに来させて」



理不尽にも、何にも関係無い財前のことをすごく憎いと思った。千歳の言葉が俺の頭を支配する。

(白石の俺への思いは、重過ぎる)

痛い、痛くて堪らない。それでもこの痛みを治せるのは、千歳だけ。













光くんも、謙也くんも、白石も。自分のことで精一杯で周りが全然見えとらん。光くんは謙也くんが好きで、謙也くんは白石が好きで、白石は俺が好きで。そんで、俺は光くんが好き。

いたいた、案の定体育館裏で肩を震わせて泣いているあの子。

「光くん」
「ち、とせ…先輩…」
「ほーら。そんなに泣かんの。可愛い顔が台なしったい」

光くんをそっと抱き寄せると、背中に手を回してくれた。可愛い。

「光くんは、そんなに謙也くんのことが好き?」
「…あんたには、関係無いですやろ……」
「関係あるっちゃ。俺は、光くんのこと好いとぉけん」
「え、」


謙也くんは白石のことば好いとるばってん、光くん辛かね。

「光くんが謙也くんのこと吹っ切れるまで、俺はずっと待っとるよ。やから、どうしようもなく寂しいときは、俺を呼んで欲しか」



光くんは顔を歪めてぼろぼろ泣いて、「おおきに…」って言った。

待ってるなんて、嘘。本当は今すぐ奪い取ってやりたい。でもそれじゃ駄目だ。彼が必要とする人間にならなければならないんだ。彼が俺の手の平に落ちてくるまで、ゆっくり待つ。


なんて言っとるけど、彼が俺のものになる保障なんて無い。実際のところ自信も、ないんだ。はは、俺も案外余裕無かったみたいばい。








この関係に、終止符が打てる日は来るのだろうか。ねぇお願い、誰か助けてよ。なるべく、なるべくで良いから、優しい結末をください。


今日もまたポツリ、涙の落ちる音がする。









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こんな感じのお話は初めて書いたのでどきどきしつつ楽しみながら書かせていただきました!
由紀さま、リクありがとうございました!これからもよろしくお願いします!!


2009.11.18 アリア



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