0401(白金/誕)






4月1日早朝。今日はエイプリルフール。世の中では嘘をついても許される日らしい。謙也は去年ようさん騙されとったしなぁ。なんでそんな日があんねん。こんな日作らんくたって嘘つくやつはつくし、つかんやつはつかんっちゅーねん。


「白石ぃ!!おはよーさんっ!」
「おー金ちゃん、おはようさん。今日も元気やな」
「あんな、白石きーて!今日、今日な!わい誕生日やねん!!」

ほら、来ると思った。うちのゴンダクレ。そんな嘘ついたってバイブルはそんな簡単に騙されてなんかやりません。いくらエイプリルフールやからって嘘はアカンで、金ちゃん。


「金ちゃん、嘘はアカンで」
「は?何言うとんねん白石!」
「今日はエイプリルフールやもんなぁ」
「!!嘘ちゃうもん、本間にわい、」
「あー分かった分かった、おめでとうな?」
「…なんで信じてくれへんの?もう、白石なんか、だいっきらいや。」



あれ、様子がおかしい。いっつも言うこと聞いてくれんくて騒ぎ散らす金ちゃんが、肩をガックリ落として黙り込んでしまった。
そんな時、部室のドアが開く。いつも通りあくびして眠たそうな顔で朝練に来た、財前。



「おはよーございます」
「おう、おはようさん。今日は早いやん。」
「はぁ、まぁ。あ、金太郎」

財前は金ちゃんの前まで移動して、頭をくしゃりと撫でた。


「金太郎、誕生日おめでとさん」
(え、)
「ひかる、おおきに!」
「今日義姉さんがお前にケーキ作ったるっていうとったから飯食い終わったらうち来いや」
「本間に?!めっちゃ楽しみやー!」
「ほら、着替え終わったんなら行け」
「ひかるもすぐ来てなぁ!ラリーしようや!」
「分かったから待っとけ」




待て。今財前は何て言った?金ちゃんの、誕生日?


「なぁ財前、今日って、」
「…なんです部長、もしかして金太郎の誕生日知らんかったなんて笑えん冗談言うつもりやないでしょうね?」
「う…」
「うわ、本気で言うとるんですか?」


財前は本気で幻滅、って感じの顔して俺を見てきた。まぁ、今回はしゃーないよなぁ。俺も自分で自分に引いたわ。こんなに金ちゃんのこと好きやのに、誕生日すら知らんかった。その上、嘘にしてしもうた。
神様は皮肉やと思う。あんなにもまっすぐで、あんなにも嘘と無縁の金ちゃんを、エイプリルフールにこの世に産み落とすなんて。


「部長、なんで俺が謙也さんに嘘つくか教えてあげましょうか?」
「…今お前らののろけ聞けるような元気ないんやけど」
「俺の嘘に騙される謙也さんが阿呆でおもしろいからやないですよ?」
「じゃあ、なんやねん」


「どんなにしょうもない嘘でも、謙也さんは疑うことなく俺を信じてくれるから、それが嬉しいんです」



はにかむように笑った財前。なんや、俺はてっきり謙也のことからかいたいだけやと思っとったのに、財前の奴そんなかわええこと考えとったんか。


「金太郎はつまらん嘘つくようなやつやないって、あんたが一番分かってますやろ?別にあいつは白石部長が誕生日知らんかったくらいで拗ねたり怒ったりするようなやつちゃう。白石部長に信じてもらえへんかったのが悲しくて寂しいんやろ。…あいつは、いっちゃん大好きな白石部長に、おめでとうって言ってほしかっただけなんとちゃいますか」


遅くないやろか。純粋無垢な君を疑ってしまった愚かな俺に、まだ祝辞を述べる権利はあるんやろうか。

「さっさと金太郎のとこ行ったらどうですか」
「…財前おおきに」



急いで部室を飛び出して、俺の可愛いあの子を探す。いつもなら走ってテニスコートに行ってしまうくせに、今日はがっくりと肩を落としてたらたら歩いとったから簡単に追いつけた。たまらんくなって、後ろからぎゅーっと抱きしめる。


「んあ、白石?」
「金ちゃん、ごめんな。本間にごめん。金ちゃんの言葉を、嘘にしてごめん」

人に見られとるかもとか、もうどうでもええ。俺はこの子が好きなんや。好きで好きでしゃーないんや。そんなこの子の誕生日に、落ち着いてなんていられるか。


「金ちゃん、誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、本間にありがとう。ホンマ、めっちゃ大好きやで」

金ちゃんは可愛い笑顔を見せてくれて、俺のほうに向きあってぎゅーって抱きついてきてくれた。


「白石、あんな、」
「ん?」
「白石のことだいきらいって、言うてごめんな?あんなん、エイプリルフールの嘘やからな?わい、もう嘘つかへんから、わいのこと嫌いにならんでな?」



謝らなあかんのは俺の方や。金ちゃん、ごめんな。そんでありがとう。嫌いになんか、なるわけがないじゃないか。こんなにも好きで好きでたまらないっていうのに。


「金ちゃん、今日帰りたこ焼き食いに行こうな。今日はおなかいっぱい食べてええで」
「ホンマ!?白石めっちゃ好きや〜!!」



学校ではしないって決めとったけど、今日は特別。笑顔いっぱいの可愛い金ちゃんにちゅ、って優しいキスをした。そしたら、君は更に幸せそうな顔して笑うから。
今日という日に感謝して、大好きな金太郎を俺の腕の中に閉じ込めた。


HAPPY BIRTHDAY! KINTARO





- 93 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -