3.悪の非愛は如何程か





・「この花散るは誰がため?」「願いは実しやかに」の続きです
・光と金ちゃんは遊女、千歳は武士
・光が可哀想です
・死ネタ含みます!!
・続きます








「うぇ、ひっく、うぅ…」
「金、泣いたらあかん。顔上げなさい」


金は遊女として新たにやって来たばかり。まだ若く、俺と同じ男やった。そして昨晩、初めて、男に抱かれた。

「これが俺らの仕事や。これから一生、こうして生きてくしかない。俺もお前も、生きるためにはこうするしかない」
「…光は、幸せ、なん?」
阿呆か、幸せなわけあるもんか。



次の日やった。色黒の大男が店にやって来て、指名されたのは俺やった。

「はじめまして、光です。お兄さん、お侍さんですか?」
「ああ、光。かわいかね。でも痩せすぎたい。これ食いなっせ」
「そんな、あかんです。お客さんから貰ったものは食べたらあかんのです」
「内緒にすれば分からんよ」

綺麗な色したそれは、京菓子と呼ぶらしい。そしてこの味は、甘いと言う名の味覚だそうだ。こんな美味いものを食べたのは初めてやった。


千歳さんはそれから何度も店に来た。ふわふわしたしゃべり方に甘い京菓子を携えて、俺のところに来た。そして彼は一回も俺を抱かなかった。


「光、俺は明日、都の方に上ることになったたい」
「そう、ですか。もう会えへんくなるのですね」
「いや、俺と一緒に来んね?ここを、逃げ出さんか」


千歳さんと一緒にここを逃げ出したかった。今度こそ、今度こそここから抜け出せる。自由を掴める。そりゃ俺やって幸せに憧れないわけではなかったけれど。

(俺も愛してる)
(俺の嫁になればええやんか)


「駄目です、千歳さん。あかんです」
「なんで?俺と一緒に行くのは嫌?」
「千歳さん。俺はきっと背中に魔物を背負っとる。…これ以上俺と一緒におったらあんた、死にますよ」
「…なぁ、光が行かへんのやったらわいを連れてってや」
「!!…金!あんたいつからそこにおってん!」
「兄ちゃん、お願いや。わいをここから出して…!」



そのあとは俺からも千歳さんに頼み込んで、俺やなくて金を連れてってもらうことにした。俺はここでも生きていける。金のような明るい子にこんなところは似合わへん。きっと千歳さんは金を大事にしてくれる。…そう、思ったのに。








「光!!金見てへん!?」
「小春さん。…うちは見てへんですよ。どないしたんですか?」
「…そこで武士同士の斬り合いがあったらしゅうて、一人巻き添えで亡くなったらしいんよ。ここに来とるお客さんがそれ見て、金によぉ似とるって」



そこから先は頭に入ってこなかった。俺はまた人を殺した。金は俺のせいで死んだ。俺が千歳さんに着いてっとったら死ぬのは俺やった。金を殺したのは、俺や。


ああもう、神様。俺はどうなったって構いません。この人生、それはもう辛いことで溢れていましたから今更です。お願いやから、俺の大切な人を奪うのはもう止めてくださいませんか。もう、もう赤は嫌い。やって、やって赤は、鮮血の色。


今日もまた日が昇る。せやけど俺の心は、真っ暗闇や。





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