鳴り響くサインとは





「光、これ持っといて」
謙也さんに、いきなり渡された。

「なんすか、これ」
「何って、防犯ブザーや」
「いやそれくらい分かってますわ」

それは紐引っ張るとでっかい音が出る、所謂防犯ブザー。小学生が変なやつらに誘拐されんように親とかに持たされる、あれ。なんでそれを謙也さんに持たされなあかんねん。


「光、可愛いやろ。せやから変な男に誘拐されるかも分からんやんか。それに細っこいから簡単に連れてかれてまうやろうしな、」

いや何言うとんねん。細っこい言うなボケ。それに一般論から言わせていただくとな、俺みたいなのが他の男に犯されるんやないかなんて心配しとんのなん謙也さんくらいやで。

俺かて謙也さんかてそれなりに女にモテる。告白されんのもしょっちゅうやし、俺はその度謙也さんが俺から離れて女のとこに行ってまうんやないかってびびっとる。謙也さんも多少はそういうこと感じてくれとるんやないかって思っとったのに、男の心配かい!

てか防犯ブザーってのが謙也さんっぽい。阿呆っぽくて大変よろしい。


「これ、要らんっすわ」
「!あかん!持っとらな危ないやんか!男は狼なんやで!」
「あんたがそれ言うなや」
「…心配やねんもん」

あぁもうそんな顔すんな。もんとか言うなきしょい(ちょっと可愛いとか思ってまった俺もなかなかの変態かも)。


「そんなん、必要ない言うとるんです」
「せやかて…」
「謙也さんがずっと一緒におってくれればそんなもんいらんでしょうに」
「…!ひかるぅ〜!」

がばって抱き着かれて、普段なら引きはがすとこやけど今日はやめといたった。なんだかんだ心配してくれたの、嬉しかったしな。

防犯ブザーは結局、金ちゃんにあげた。まぁ必要なさそうやけど。
俺のことは謙也さんが守ればええねん。抱きしめてきた謙也さんの心臓の音は、防犯ブザーなんかよりもうるさかった。多分、俺のも。



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