誰かの願いが叶うころ(謙光→←蔵/拍手)





−Side白石



「光。俺じゃあかんか?」
「謙也さん、」


「俺は白石みたいに完璧や無い。あいつはイケメンやし、頭も良いし、テニスやってめっちゃ強い。俺が白石に勝てるとこなんか一個もない。」
「…………」
「でも、俺は光の全部を受け止める。世界一大事にする。優しくする。傷付けん。幸せにする。今は光の中白石でいっぱいかもしれんけど、ちゃんと光に好きになってもらえるように頑張るから。」
「…………」

「俺と付き合って」






「…俺まだ、部長のこと完璧に忘れられへんです。………やけど、部長でいっぱいってわけでも無くて、」
「え」
「部長のことで辛いときも、謙也さんが居てくれると笑えた。泣いてまったときも謙也さんが涙拭ってくれた。最近一日の中で、謙也さんのこと考えとる時間がどんどん増えとるんです。都合よすぎますよね、俺」
「…阿保っ!そんなこと、無い…!全然そんなこと無いっ!!」




「ねぇ、謙也さん。好きになってもいいですか?」





「…当たり前や阿保っ!光、好きや。好き、めっちゃくちゃ、大好き…!」
「…俺もきっともう、謙也さんのことが好きです」
「すぐ俺でいっぱいにしたるから、絶対幸せにするから、」
「謙也さん…キスして」








それから二人は触れるだけの優しいキスを繰り返して、抱き合って、手繋いで部室から出てった。


なんて美しい話。
ただ、俺からしたら悪夢やった。







「なんやねん、」



部室覗いたら謙也と財前がおって、上のような会話。ドラマとかで言うとこれから二人がくっつくフラグ立ちまくりって感じやな。

俺も、財前のこと好きやったんやけど。




男の俺が財前と付き合えるわけないと思った。財前はただでさえイケメンなんやからきっと可愛いらしい女の子がよぉ似合う。


せやけど。実際は財前は俺が好きで、俺も財前が好きで。両思いやったんか俺ら。
でも財前は謙也とキスした。イコール、謙也を選んだ。



本間、死にたい。









−Side謙也



光と俺は付き合うことになった。まだ光が白石のこと好きでも、それでも良かった。俺は光に好きってたくさん言うた。たくさんたくさん言うた。最初は「ありがとうございます」と言うことが多かった光も今では「俺も好きです」言うてくれるようになった。最初は白石を忘れるためにしとったキスも今では純粋に俺を求めてくれとるのが分かった。俺はそれが嬉しくて仕方なかったんや。

やから、俺はもう十分。










「白石はそれでよかと?」
「千歳うるさい」
「ねぇ白石、」
「うるさい」
「しら「うるさい!!お前に俺の気持ちが分かるか!!」
「…………」


「好きやで、財前のこと、今でもめちゃくちゃ好きや。本間に、本間に好きや…!!」

「待つばい白石…謙也と光、聞いとる…」
「は、」







光と部室に行ったら、千歳と白石がおって。あぁ、光と白石は両思いやったんや。光はびっくりして目ぇ見開いて、顔真っ赤にして。良かったな光、本間に良かった。もう白石を思って泣かなくてええ。光は、一番好きなやつと幸せにならんとあかん。


「光、俺たち終わり、な」
「謙也さん、」
「これで光はもう、泣かんで済む。俺はそれでええから」
「…謙也、さん、」
「光、本間好きやったよ。幸せやった。ありがとうな」





好きやった。本間に好きやった。本間に本間に大好きやった。光を俺でいっぱいにしたかった。本間は渡したくなんかなかった。でも、俺の中の最優先事項は常に光が幸せになることやから。

白石、今日くらいは部活休むの許してな。







−Side光



大好きな部長が俺のことが好きやって言うてくれた。余裕の無い表情で、半泣きになりながら俺を好きだと言ってくれた。嬉しかった。嬉しいはずなのに、なのに。



(光、俺たち終わり、な)

頭の中は謙也さんでいっぱいで、終わりになんかしたくなくて。
初めこそ、謙也さんを利用しとった部分はあったかもしれん。でも今は、そんなことない。俺は謙也さんのことが。



「部長、俺…」
「言わんくてええ」
「……」
「財前、早く謙也のとこ行ったれ」


「……ありがとう部長。大好きでした」






俺を励ましてくれたこと。善哉を奢ってくれたこと。涙を拭ってくれたこと。キスしてくれたこと。おもいっきり抱きしめてくれたこと。いつだって全力で愛してくれたこと。それに今からでも応えたい俺は、ずるいかな?



場所は分かってる。俺が部長を思って何度も泣いて、謙也さんが何度も俺の心を助けてくれた公園。




謙也さんはベンチに座って俯いていた。あ、頭少しプリンなっとる。


「謙也さん、」
「?!ひ、ひかる?どうして」
「好きや」
「え…」



「俺は謙也さんが好きや。気付いたら俺の一番は謙也さんやった。本間に好き、本間に、本間に大好きやねん。せやから、終わりとか言わんでください」






何度も俺を救ってくれた優しくて強い謙也さんが、初めて、泣いた。ごめんね謙也さん。本当はずっと不安やったんよな。もう大丈夫。謙也さんの涙は全部、俺が拭うよ。




「白石は、ええんか」
「もうすっぱり諦めれました。謙也さんのおかげっすわ」
「これどっきりとかやったら俺も流石に怒るで」
「阿保か。不安なら何度やって言いますよ。俺は謙也さんが好きや。」
「…………」
「好き、めちゃくちゃ好き。本間愛しとる」
「…お前、そんなん言われたらもう絶対お前のこと離せへんからなぁ…」
「当たり前や。離したらこっちこそ怒りますよ」
「…うぅ〜…っ、」

「なぁ謙也さん。謙也さんはちゃんと俺のこと好きですか?」
「あ、阿保ぅ〜…そんなん、っ、言わんくても分かるやろぉ〜…」
「言ってくれな分からん」
「…ひかるらぶ」
「ぶはっ!」
「笑うなや!!」






このあと謙也さんがしてくれたキスは、今までで一番幸せの味がした。













おまけ



「…………」
「白石、」
「…っ、ぅぅ〜…千歳のばかやろ…」

「し、白石!今から俺ん家でトトロば見よ!」
「………っ」
「あ、ナウシカでもよかね!ラピュタも捨てがたいばい」
「…、…っぅう……」


「あ、ぎゅーする?それかキス」
「…………え?」

「謙也と光はきっと幸せになる。白石も幸せにならなきゃいかんたい。俺が幸せにするよ?」







「………………全部」
「え」
「やから全部!トトロもナウシカもラピュタも…ぎゅーも、キスも。はよ千歳ん家連れてってや」
「!もちろんばい!」








光くん。白石くんならきっと大丈夫。どうやら新しい王子様が現れたみたいですから、ね。





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