聖愛(ちとにょた光)





光と白石がにょた




いつもふらふらしよって全然うちの方見てくれへん千歳先輩。学校におらんこともしょっちゅうで、その度にうちが心配しとることも分かってほしいわ。

それでも一応付き合うとるわけやから、一緒に過ごす初めてのクリスマスや。なんて期待しとったうちは馬鹿やった。



「24日の朝から実家帰るばい!」
「……は?」
「せっかくやけん始業式ぎりぎりまで向こうおることにしたっちゃ!」
「…千歳先輩、早く九州帰りたいですか?」
「当ったり前ったい!はやくミユキに会いたか!」


「そうですか。じゃあ一生帰って来んくてええです」








酷いことを、言った。やって、耐えられへんかったんやもん。うちだって素直になれへんだけで、恋人で過ごすクリスマスにはずっと憧れてた。千歳先輩と付き合ってからたくさん幸せを貰った。

それでも、同じだけ、いやそれ以上の不安も貰っとる。










23日、部活は普通にあった。顧問の粋な計らいで24、25日は休みになったけど。寧ろ部活あったほうがましやったわ阿保。

その日の部活は散々だった。男テニのコートを見ても千歳先輩の姿は無くて、今頃浮かれまくって明日の準備をしとるんやろ。例え会いに行くんが妹やとしても、やっぱりうちは寂しくて。気付いたら千歳先輩のことで頭はいっぱい。




部活のあと、白石部長に呼び出された。ちゃんとしたテニスが出来へんかったことを怒られるかと思いきや、「どないした?なんや辛いことでもあった?」なんて頭を撫でられたら涙腺が崩壊して。


部長はうちを部長ん家に連れてってくれて、あったかくておいしいご飯を出してくれて。うちはいっぱい泣きながらご飯を食べて、結局泊めてもらって。

白石部長に聞いてもらったら幾分か心が軽くなった。それなのに涙が止まらんのは、きっと「一生帰って来んくてええ」なんて言ってしまったから。

千歳先輩だけが悪いんやない。うちがちゃんと素直になれへんのも原因やねん。甘えられへんのも原因やねん。本当に一生帰って来んくなったら、うちはどうなってしまうんやろうか。












次の日の朝。千歳先輩が出発する、朝。部長ん家のインターホンがすごい勢いで鳴る。白石部長が「うち今すっぴんやから光代わりに出て!」なんて言うもんからドアを開けた、ら。



ああもう。部長の馬鹿。本間おおきに。






「千歳、先輩…」
「光、メリークリスマスばい!」
「なんで、」
「光、ごめんね。白石に怒られるまで気付いてやれんかった。ごめんね」
「…それよりあんた、はよ行かな飛行機に置いてかれますよ」
「うん、だからこれクリスマスプレゼント」




プレゼントはでっかい紙袋と封筒がひとつ。「準備が出来たらおいで、待ってるから」って囁いて、千歳先輩は出て行った。










紙袋には、白いコート。封筒には…明日の朝発、熊本行きのチケット。

封筒の裏には、彼独特の丸っこい字でメッセージ。


『チケット、この時間しかとれんかったけん、一緒に行けんくてごめんね。そのコート着てはよおいで。そんで、光のこと家族に紹介させてね』






もう、また泣いてもうたやんか。一人で泣くのは、もう嫌。早く早く、抱きしめて。



彼に会って、言いたいことがある。酷いこと言ってごめんね。それと、



(メリークリスマス!)





- 66 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -