スタンド・バイ#ミー





・謙也も光もまさかのご老人。75,6歳くらい
・死ネタです
・でも幸せな死ネタのつもりです









謙也さんは、半年ほど前に逝ってしまった。「光、大好きやで」なんて言って眠るように。この年まで大きな病気もせず、しかも大好きな俺の腕の中で死ねるなんて謙也さんは幸せモンや。理想的な、最期。


謙也さんの葬式はとても質素なものやった。男同士の俺らに子孫や親戚がおるわけなくて、互いの両親だってもう亡くなったから。
それでも遺影の謙也さんは俺の大好きな笑顔で、俺はそれだけで十分だった。



「俺よりも、一日でもえぇから長く生きてくださいね」
それは叶うことはなかったけど、俺は後を追うなんてことは考えなかった。やって、俺ももう歳やし、きっとそうは長くないんや。それなら謙也さんと存在しとったこの世界に、もう少しだけいたい。




若い頃の俺は、謙也さんとの終わりばっかり考えとった。いつまで一緒にいられるのかってことばっかり。それは、いつか離れなきゃいけない現実がつらすぎたから。



でも謙也さんは傍にいてくれた。次々と周りの奴らが奥さんを貰ってく中で、謙也さんは俺の指にペアリングをはめた。お互い顔も手も皺だらけになって、白髪だらけになって、髪も薄くなって。

それでも謙也さんは俺の髪を撫でる。愛おしむように見つめて、キスをして。年とってあんまセックスせんようになってからやって毎晩謙也さんは俺を抱きしめて眠って、愛してるなんて言って。



「人生の中でいつが一番幸せでしたか?」なんて聞かれたって、答えられん。やって、俺は13で謙也さんに会ってからずっとずっとずーっと幸せなんやもん。



(光は本間にかわええな、)


(光、一緒に住もうか)


(髪ちゃんと拭かんと風邪ひくで!)


(……なぁ、光。おまえ子供欲しい?)


(ごめんな、ひかる)


(はぁ、離しとぉない)


(光ー抱っこさせてや)


(なぁ、今日一緒に風呂入ろ?)



(光、愛してる)


(愛してる)


(愛してる)






(ひかる、愛してる)







俺の人生は振り返ってみると謙也さんだらけやった。謙也さんのあったかさ、謙也さんの声、謙也さんの笑顔のために俺は生きていた。

なぁ、謙也さん。俺、頑張ったけど、あんたがいない世界にいるのはもうそろそろしんどいよ。早く、抱きしめて。謙也さんの愛で俺を包んで。



今日は酷く眠たい。それに、光りが見える。あったかくてぼんやりとした光りに包まれる。出会ったときの謙也さんの髪色はたしかこんなだったなぁ。謙也さん。あんたは俺の光りなんだ。

謙也さん、謙也さん、けんや、さん。


(あぁ、)




やっと、会えるね。








俺が人生の最期に想ったのはやっぱり謙也さんのことで。俺はもう、謙也さん無しじゃ幸せになんかなれませんわ。







ねぇ、謙也さん。来世も一緒がいいな。だって、俺たち前世も一緒やったと思うんです。あんたと一緒におるのは俺の使命やと思うねん。
ちょっと、ちゃんと聞いてます?あんまり俺から言うたことなかったから言ってあげますね。



謙也さん、愛してました。それでこれからも、ずっと愛してます。
もう、俺のこと置いていったら嫌ですよ?





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