愛してあげるから、愛して。/前





ふたりとも大学生





俺達は一緒に大人になった。俺は二年浪人して医大に、光は外語系の大学に入って現在二回生。学年追い越されてもうた。そんで今、アパートで二人暮し。


男同士の恋愛は決して楽やなかった。せやけど俺は光しか見えんくて、光も俺を好きやと言うてくれた。せやのに、最近不安でたまらんねん。



俺と光の世界は少し変わってしまった。光は大学のテニスサークルに入って今もテニスをしとる。昔から大好きやったCDショップでバイトして、音楽に詳しい仲間もいっぱい出来た。毎日忙しそうやけど、それ以上に楽しそうで。


俺はというと、医学部は想像以上に大変やった。めっちゃくちゃ頭ええ奴らの中で山のような量の課題やって、凹むこともしばしば。



こんなん、恋人失格やと思う。たまに遠出すれば光は「俺はバイトしとるから」ってほとんど金出してくれようとするし、光やって忙しいのに毎日毎日ご飯作ってくれるんや。光、ごめんな。俺、お前になんもしてやれてないよ。



なんや、鬱なりそう。最近俺が俺やないみたいやねん。昔は精神ちょっと脆かった光に「大丈夫やで!」って言うのが俺の役目やったのに、今はそれを言う余裕すらない。
それに、光は強くなった。泣き言を言わんくなった。前向きになった。

今の光に、俺は必要なんかな?














今日は4限が休講になったもんやから、帰り道気付かれんように(見つかると怒るから)光のバイト先を覗いてみた。…あぁ、ちゃんと働いとる。てか可愛いし。
そしたら光は休憩入るみたいで可愛い女の子が呼びにきた。



「ひかるん交代やでー」
「本間?おおきに」
(ひかるんて、呼ばれとるんかいな…)


「今夜飲み会あんねんけどひかるん来るやろー?」
「あー…俺パス」
「えーまたー?一緒に飲もうやー!」
「綾美さん酔うと絡みづらいらしいから嫌や」
「ちょ、誰が言うたん?ひっどー!」
(綾美さんって、呼んどるんやなぁ…仲ええんや、)


そしたら背が高くて眼鏡かけたイケメンの男の人が会話に入って来て。

「綾ちゃんあかんでー!光はお家で可愛い彼女が待っとるさかい、はよ帰らなあかんのよなー?」
「そうなん?!知らんかったわぁ!ねぇねぇどんな子なん?可愛えのん?」
「……可愛えっちゅーか、…ボーイッシュ、かな」
(はは、ボーイッシュってかボーイやしな)




これ以上は見てられんかった。胸が、苦しい。


この数年、もしかしたら俺は光を縛り付けてまっとったんか。夜やって本当は遊びに行きたかったのかもしれん。俺がおらんかったらよかったんかな。
俺が、おらんかったら。






「今日は帰り遅なるわ」って光にメール送って、俺は家から反対方向に向かった。




絶対一生離れないで済む方法ってあるんかな?あるなら誰か教えて。光と離れずにいられる方法を、教えて。





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