優しさにつつまれたなら(光+甥)





いきなし降ってきたのは大粒の雨。テニスの練習ももちろん中止。傘?持っとるはずないし。

制服に着替えてもどうせ濡れてしまうならと練習着のまま学校を出ることにした。iPodと携帯だけは壊れたら本間へこむからタオルでぐるぐる巻きにして鞄のいっちゃん奥に突っ込む。

さすがにあまり長い間外におると風邪引くから謙也さんと今日は一緒に帰れへん。風邪ひいたらあかんで、て髪を撫でてくれたのが嬉しかったからまぁ今日は我慢したろ。


こうして俺は家まで走った。
















玄関が閉まってた。おかしい、いつもならねーさんがおるのに。とりあえず鍵を開けて、本間に風邪ひいたら洒落にならんから速攻風呂行った。

濡れた髪をタオルでわしゃわしゃ拭きながら鞄の中の荷物から携帯を出す。よし、濡れとらん。よかった。
携帯を開くとねーさんから鬼のような数の着歴があって、驚く間もなくまた電話がかかってきた。


「もしもし、どないしたん?」
「あーやっと出た!お願い光くん、優のお迎え行ったって!今外出とって行けそうにないねん!」
「はぁ?!分かったすぐ行く」


優ってのは俺の甥っ子。てっきりねーさんと出掛けたんかと思っとったけどまだ幼稚園におるらしい。ねーさんは普段はずっとうちにおるから優はこんな時間まで幼稚園に残されたことがない。俺は急いで傘と優のレインコート持って外に出た。


自分がこんなにも子供が好きやなんて正直思わんかった。最初は餓鬼なんてうざいだけや思っとったはずなのに、可愛くてしゃーない。兄ちゃんは仕事でいつも帰りが遅いからかわりに遊んでやったりもしとって優はよく俺に懐いた。


幼稚園にポツンと残された淋しさを俺は知らん。ブラコンな兄ちゃんはいつも時間通り来てくれたから。俺は優の涙に弱いから、優にもそんなこと思わせたくないんや。
なるべく急いで幼稚園へ向かった。












「こんばんは、えらい遅なってすみません。財前優の叔父です」
「ご苦労様ですー。優くーん!お迎え来たでー!」

優はふて腐れとってなかなかこっち来ぉへん。
「優、今日はひかがお迎え来たったで」
優の肩がぴくっと震える。それでもその場を動かん。

「優、今日はひかが抱っこしたるから帰ろ?」
そう言うと優はダッシュしてきて俺の足にしがみついた。

「先生、どうもお世話さんでした。ほら優、先生にさようなら言い」
「………さよーなら」
「はい優くんさようなら!また明日ね」


濡れたらあかんから泣きそうな顔した優に黄色のレインコートを着せて、抱っこして傘をさす。体制的にちょぉ辛いけどそれは我慢や。

「優、ごめんな。一人ぼっちなったこと今まであんまりなかったもんな」
「…うん」
「ねーさんのこと怒ったら可哀相やから、怒っちゃめ、やで」
「…うん」
「…優、寂しかったやんなぁ。もう大丈夫やろ、ひかがおるもんな」


「っ、うぇ、ひか、ゆうひとりいやや…ふぇ、うわぁぁーん!」
「ごめんごめん、今日は帰ったらいっぱい遊んだるから」
「ぜったいやで、きょうはぜったいひかとあそぶもん!」
「分かった。絶対今日は優と遊ぶ、約束」


優は「やくしょく!」て涙でぐちゃぐちゃの顔で俺に薬指出してきたけど、優を抱っこしとるから指切りげんまん出来ん。やから代わりに優の柔らかなほっぺにキスした。












その後。
「光くん保育士さんたちに大人気やったよ!イケメンやって!やから部活ない日は優の迎え行ったってな!」
「えー…」
「ひかのおむかえ!(キラキラした目)」
「あー分かった分かった!行ったるから!」






その後のその後。
「光!今日どっか寄って帰ろか!」
「あー堪忍っすわ。俺ちょお急いどるんで」
「なんや用事?」
「子守っすわ。ほな」
「はぁあ?!」


「白石ぃ、どないしよ…俺、父親になってもたみたいなんや」
「そーか。おめでとさん(本間に謙也は阿呆やな)」



早く、早く。大好きなあの子を迎えに行かなくちゃ。



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