財前光素直デー(拍手)
｢謙也さん、好き。いっちゃん好きや。白石部長と一緒にいすぎやねん、それに侑士くんと電話しすぎ。俺やって妬くっちゅーねん。｣
｢そかそか、勘忍なぁ｣
スーパーにお客様感謝デーがあるように、俺と光の中には財前光素直デーがある。毎月第三土曜日から日曜日にかけてや。
光はよぉ素直ちゃうとか言われとるけどそこも可愛ええねん。とか前までは思っとったんやけど、光が自分の気持ちを素直に言うてくれんことが原因で大喧嘩をしてまったことがあった。俺もそれなりに傷付いたし、光はいっぱい泣いた。せやからもう二度とそうならんように財前光素直デーを作った。ネーミングセンス無いとか言うなや。
素直デーでは光は絶対素直に自分の思っとることを言わなあかん。俺への要求やら気持ちやらなんやら。光は最初こそ嫌がっとったけどあの日の喧嘩が相当堪えたのか普段あんなにツンツンしとるくせにここぞとばかりにデッレデレになる。
素直デー万歳！
でも一つ問題が。素直デーは毎月お泊りなんやけど…えっち禁止やねん。これは光の要望。シちゃうと余裕無くなってしっかり話出来なくなるからやて。
これは俺にとってはかなりきつい。一緒のベッドで寝るから光は近いし、いつもより素直やからめっちゃめちゃ可愛いし。あかん！堪えろ！堪えるんや謙也！でも結局俺は素直デーにシたことはないし、これから先も絶対そうはならん自信がばっちりある。
｢っ、ひ、けんや、さん…俺、こんなんでごめんなぁ。本間に、ごめんなさい…｣
それは、この日は必ず光が泣くから。光は自分が男であることにかなりの引け目を感じとる。俺は光しか見えとらんのに、他の女なんかどうでもええのに。
｢光、聞いて。俺は光やから好きやねん。光以外はどうでもええ。一生光だけ｣
ほら。この日も一緒に、ただただ温もりを感じて眠る。光が光でいてくれるなら、女でも男でも犬でも猫でもええんや。俺からこんなに愛されとるんやからもっと自信持てや。
｢けんやさん、だいすき｣
｢うん、俺も｣
明日からまたツンツンな光やけど、それもそれで可愛いんよなぁ。
光がおるだけで、明日が来るのが楽しみや。
安心しきったのか光はすっかり眠ってしまった。
｢ん、けんやさん……すきや…｣
かかか可愛すぎやろ！
寝言でも俺のことって！あーやっぱりこれはかなりクるな…。
頑張れ俺。頑張れ俺の息子。朝が来るまで、あと数時間。
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