好機か否か、それとも?(謙光←蔵)





ヘタレやし阿保やし。顔はまぁええけど俺のがイケメンやし。足だけは速いけど俺のがテニス上手いし。せやのになんで、なんで財前は謙也が好きなんやろか。意味分からん。


「あ、白石部長。謙也さんおりますか?」
「おう財前、謙也なら購買行ったで。ちょっと待っとればすぐに帰ってくるやろ」

ほなそうします、言うて俺の前の席に財前は座った。今日も財前はかわええな。んー、絶頂!謙也なんやめて俺と付き合えばええのに。


「謙也さん購買に何買いに行ったんですか」
「さぁ?なんやパン買うてくるとか言うとったかなぁ」
「謙也さんいつもおばちゃんが作った弁当持って来とるやないですか」
「足りひんのやろ」

財前は謙也の話しとるときだけバリア解けたみたいに可愛く笑いよる。謙也、もうしばらくは帰ってくんなや。

「謙也さんって本間に阿保ですね。部長と大違いやわ」
「はは、そうか?確かに謙也は阿保やけどな」
「本間ですわ。それに比べて部長はかっこええしテニス上手いし頭もええし人望もあるし、完璧やな。みんなが憧れるのも分かりますわ」

純粋に嬉しかった。俺、財前にそんな風に思われとったんか。せやけど一瞬舞い上がった俺の心は一瞬でたたきのめされることになる。


「せやけど、俺は負けへんですから」
「は?」
「部長は確かに完璧です、否の打ち所があらへん。俺なんてまだまだ餓鬼やし、部長に敵わんのは分かっとる。やけど、謙也さんのこと好きな気持ちは絶対に負けへん」
「………」
「謙也さんは、俺のんですから」
「…さよか」



どうやら財前は、俺が謙也を好きやって勘違いしとるらしい。謙也さんのこと好きな気持ちでは負けへんって、当たり前やないか。俺謙也に恋愛感情なんないし。俺がよう見とるのは謙也やなくて一緒におるお前やし。



「ひっかるー!待たせてすまんかったなぁ!」
「本間遅いっすわ、謙也さん」

ニッコニコしながら謙也は戻ってきた。財前も財前で一緒顔が緩んだのを俺は見逃さんかった。俺を見るときとは違う、優しい優しい顔(俺はライバル視されとるもんな)。


光今日泊まりこぉへん?おかんが光めちゃ気に入っててん、晩飯食いに来いって。へー、今日謙也さんとこの晩飯何っすか?たしかおでん。夏におでん…。

そんな感じの会話しながら二人で飯持ってどっか行った。今日はどうせ部活のあと二人で謙也ん家行っておでん食ってセックスするんやろ。嫌んなるわ馬路で。

財前が謙也にベタ惚れなのは知っとった。それでも俺も多少は良く思われとるかなぁなんて期待しとったけど…まさか敵意持たれとるとはな。結構辛い、かも。


いつの間にかこんなに、財前を好きになってたなんて。これから俺はどうしようか。謙也を好きなふりを続けたら財前は少しでも俺を見てくれるだろうか、なんてひねくれたことを考える。


ああもう、誰か毒手で俺を殺してくれ。



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