おんなのこ日和(謙にょた光)
「その日うち誰もおらんのですけど…帰り寄ってきます?」
光と久々にどっか遊びに行くかーってなって、そんなこと言われて。俺は舞い上がっとった。やから体調悪い言われて中止になったことにはちょっとへこんだ。
あと、すっごく心配になった。光は普段調子悪くても結構我慢する子やから。体、きついんかな。しかも家誰もおらんって言っとったし、光一人じゃ何も食わんのよな。
お見舞いくらい行っても大丈夫やろか。
コンビニでゼリーとかスポーツドリンクとか(あと一応カップ善哉も)買って光ん家に行ってみる。何故かちょっと緊張しながらチャイムを押す。
しばらくしてから光が出てきた。何も弄ってないぺしゃんこの髪、上はTシャツに下はスウェット。やばいかわええ!…やなくて。顔色はあんま良くないし、怠そうに腰を押さえている。
「謙也さん、」
「いきなりごめんなぁ。光が心配やってん。熱とかあるん?迷惑やったらすぐ帰るから」
「わざわざ、ありがとうございます。………うっ」
光はそれだけ言うとしゃがみ込んでまった。
「光!大丈夫か!?どっか痛いん?」
「………………生理痛っすわ」
「え」
「せやから、生理痛」
どこと無く顔を赤らめる光。んで、多分真っ赤な俺。
「う、えっと…俺が光に出来る事ある?迷惑やったら帰るんやけど…あ、お腹痛いんやろ?摩ったるし、その…」
「ふふ」
「(笑われた!)」
「おおきに。んじゃあがってください。うち今日は何も用意してないですけど茶くらいなら出せるんで」
「お、おん」
気丈に振る舞っとるつもりかもしれんけど光は本間にしんどそうやった(立ち上がるとき顔をしかめたのを俺は見逃さんかった)。
痛みに波があるみたいで光は楽しそうに話しとったり突然黙り込んだりしとる。
「光。お腹痛いんやろ。なでなでしたるからこっちおいで、らっこしよ」
「…なでなでとか、キモい…」
「ええから、ほら」
光を後ろから抱くようにらっこ座りさせて腹を摩る。あと腰も抜けそうに怠い言うとったから腰も摩ってやった。
「光、大丈夫か?」
「…大丈夫や、ないです…しんどい……死ぬ」
「薬飲んだ?」
「のんだ…」
「痛いの痛いの飛んでけ〜やで!」
「阿保………」
光は本間にしんどそうで、見とるこっちまで眉毛が下がる。するとそんな俺を見て、光は小さい声で話し出した。
「なんで謙也さんが泣きそうな顔しとるんですか」
「や、やって……」
「うち、ずっと男に生まれればよかった思っとったんです。やってずるいやないですか、男ばっか得しよる。テニスでもいつの間にか金太郎に負けとるし、えっちのときもこっちのが辛いし、生理やってあるの女だけやし」
「…せやね(返す言葉もございません…)」
「でも最近は、女に生まれてよかったって思うとるんです」
「え」
「いつかは欲しいし。その…謙也さんとの、赤ちゃん」
途端に顔を赤くして。あんた目ぱっちりやから女でも男でも謙也さんに似ればええですけどね、でも阿保なとこは似たら困りますわ、なんて早口で言うて(照れとるのばればれや)。
耳元で「いつか元気な赤ちゃん、産んでな」言うたら「しゃーないっすね」て彼女は微笑んだ。
お腹摩っとったら光はそのうちうとうと眠ってしまった。せやからばれんようにこそっと呟いといた。
「子供は絶対、光に似とったらええな…」
きっと世界中で、光の次にかわええやろな!
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