0720(光誕)





7月20日0時37分。
今日は俺の誕生日。


昨日の夜から謙也さんのうちに泊まりに来とる。上手い具合に家には謙也さんと俺しかおらん。本間よぉやるわ、この人。どうやってこの状態作り出したんやろか。謙也さんは侑士くんほどやないけど案外ロマンチストで、今日の為にいろいろ考えとったらしい。

どうやら謙也くんは日付が変わる瞬間、せっくすして繋がったまんま「好きや光、おめでとう」みたいなんがやりたかったみたいや。でも我慢出来んかったみたいで(まぁ俺もやけど)部屋でふたりになると同時にピンクい空気になってそのまま〜みたいな。おもいっきし20日になる前に全て終わった(それにこれ以上は俺が無理)。

いつもはそのまんま寝てまうのにまた無駄に張り切った謙也さんは「今日は一緒風呂入るか!」とか言い出した。で、入ったは入ったんやけど。

謙也さんは流石スピードスターっちゅーか、風呂がめちゃ早い。んで、俺は基本的にいつも風呂は長い。謙也さんは真っ赤な顔して湯舟に浸かっとったから「先出てえぇですよ、謙也さんのぼせてまう」て言うたら「や、今日は頑張るで!」とか言って俺に合わせてくれちゃって。

案の定謙也さんはのぼせてへろへろになっとった。上半身裸で「うぅ〜暑い〜」て唸っとる。優しい優しい俺はそんな謙也さんをうちわで扇いだる。そんなこんなしとるうちに日付が変わった。あ、ハッピーバースデー、俺。

「暑いなら先出とってええって言うたのに。無理しはるからですわ」
「ぅ〜やって〜明日は……って!!!!今何時や?!」

やっと気付いたか全くこの人は。時計を見てがっくーんなっとる。落ち込みすぎ、本間かわええ人や。
「あぁ…ひか誕が始まっとるやないか……」
「変な略し方せんといてくださいよ」
「………光、本間にごめんな、俺っていつもなんでこうなんやろ」
「別にあんたのヘタレは今に始まったことやあらへんやないですか」

謙也さんは泣きそうな顔でまた謝った。「そんな落ち込まんでえぇですわ。俺、謙也さんが傍におってくれるだけで幸せなんです。せやから、0時ちょうどに祝われなくてもえぇし本間はプレゼントやっていらんのです」なんて言えたらどんなにえぇやろか。本間俺は損な性格をしとると思う。

「…なぁ謙也さん」
「………はい」
「あんたなんか俺に言うことあるやろ」
「ごめんなさい」
「ちゃうわ」
「愛してる」
「…惜しい、かな(ある意味正解かもしれん)」
「誕生日おめでとう」
「ん、正解」

謙也さんは俺を抱きしめてくれた。未だに泣きそうな顔しとったから「俺、怒ってへんですよ」言うたら嬉しそうに笑った。

「光!俺プレゼント用意した!」
「言うとくけど市販のショートケーキの上の苺の部分に代わりに白玉がねじ込んであるケーキは要りませんよ」
「……冷蔵庫、見た?」
「見た。なんでも好きなもの合体させたらえぇわけとちゃうで」
「そ、それだけとちゃうし!」

謙也さんは「ジャーン」とかいうださい効果音とともに俺に小さな紙袋を渡した。そっと開けてみる(謙也さんの目がむちゃくちゃキラキラしとって「はよ開けろ」言われとる気分やってん)中に入っとったのは、カーマイン色の小さな石の入ったゴツめのシルバーリング。

「俺な、好きな子と、その…ペアリングするん、夢やってん。でも光嫌がるかなーて思て。やからちゃんと分かりづらいデザインにしたし!あ、嫌やったらごめんやけど」
謙也さんの指にも同じような指輪があった。阿保か。こんなんされて、長年の夢を俺みたいなので叶えようとしてくれて、そんなん嬉しくないわけないやろ。

たまらなくなって謙也さんにおもいっきり抱き着いた。
「え、ひか?嫌やった?」
「………………」
「光?泣いとるん?」
「…嫌なわけないやろ。阿保、好きや」


「…光、本間に産まれてきてくれてありがとう。一緒におってくれてありがとう。テニス始めて、俺のこと好きになってくれてありがとう。光の誕生日、これからも一生俺に祝わせてくれ」

謙也さんは結局「おめでとう」は最初の一回しか言わんくて、本来俺が祝福の言葉の返事として言うことになるはずだった「ありがとう」を俺にいっぱい伝えた。

「一生、ですからね」
「…!おう!一生や!」

おかん、俺を産んでくれて本間におおきに。あと4ヵ月くらいはよ産んでくれたら更にベストやったけど、まぁしゃーないな。あんたの息子は今、世界一幸せやで。

謙也さんの誕生日には何をして驚かせようか、なんて気の早いことを考えて、俺は少し笑った。


HAPPY BIRTHDAY! HIKARU




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