届けばいいと願っても(謙ユウ/ユウ光/謙光)




※ぬるい性描写あり
・謙ユウ、ユウ光、謙光要素を含みます
















「っは、けんや、さ…」

財前と謙也が別れた。振ったのは財前から。でも本当はお互いが好きで好きで仕方なくて、男である自分と付き合ってる謙也の未来に不安を感じた財前が話を切り出したって感じらしい。


「ぁ、あぁ…けん、や、さん…好き…っ」
「ひかる、ひか、っひかる…!」


で、今謙也に抱かれとる俺は謙也が好きなわけやない。てか俺が好きなんは財前やし。この行動の目的の全ては財前を俺に依存させるため。



財前に振られてべっこべこにへこんどる謙也と部活のあとふたりきりになって、俺は言った。


「なぁ、謙也。財前のこと忘れられんのやろ。俺、財前の真似してやるからヤってみようや。俺も男同士の、興味あんねん」


普通やったら断る話やろうけど、謙也は今おかしくなっとるから迷わず承諾した。

「ひかる、ひかる…好きや、本間、好き…っ」


謙也とのせっくすは全然気持ち良くなかった。俺から言い出したし怪しまれんように財前の声で喘いどいたけど。謙也はイっとったけど。俺下側向いとらんわ。ケツも腰も痛いし最悪や。

俺がどうしてここまでするかっちゅーのは、謙也を慰めてやりたいとかそんな美しい感情やない。
俺の目的。それは、謙也の完全コピー。謙也がどんな風に財前に触るのか、俺の頭にインプットする。

「ユウジ…ごめん、本間ごめん」
「俺が言い出したんやし別にそんなへこまんでええやろ。お疲れさーん」

全ては、財前を俺に依存させるため、だ。












「よぉ財前」
「ユウジ先輩…」
「ちょっとこっち来い。どうせ暇やろ」

部活が終わったあと俺は財前の腕を引っ張って体育倉庫まで連れてった。謙也と別れてからまるで覇気の無い財前はよたよたしながら着いてきた。さて、始めるか。

「財前、俺本間にお前のこと心配しとんねん。まだむっちゃ好きなんやろ、謙也のこと」
「………ユウジ先輩には関係無いっすわ」
「関係無くなんかないわ。これから可哀相な財前を慰めたるんやから」
「ちょ、何すんですか!」

俺は自分のヘアバンドで無理矢理財前の目を覆った。

「ちょ、ユウジ先輩、本間やめて」
「…ひかる」
謙也の声を出すと財前は途端に大人しくなった。
「光、光。俺はまだお前が好きやで」
「……けん、や、さん」

謙也がするように、財前に触る。舌を乳首に這わせながら下着の中に手を入れると、財前は引っ切り無しに喘いだ。
「ぁ、んぅ、は…けんや、さ…ぁあっ」
「光、気持ちええ?」

全部全部謙也がしたように。インプットした知識を、吐き出す。触れるか触れんかくらいの弱さで握ってゆるゆる扱く。溢れ出した先走りで後ろを慣らした。少しずつ中を指をいれると、財前は気持ちよさそうにしとった。何回も、しとるんやろなぁ。


俺は自身を財前の中に入れた。むっちゃ狭くてむっちゃ熱くて、むっちゃ気持ちええ。

「…っ、ひか、ええよ、」
「あ…っ、ぁ、謙也さん、まだ…まだ、好きやっ、謙也さん、っ…ぁあぁっ」
財前は小さな体(っちゅーても俺と同じくらいか)を揺らして俺の腹に欲を放った。俺もそれとほぼ同時に、ゴムの中に出した。ふたつの息遣いだけが薄暗い体育倉庫に響く。先に話しだしたのは財前やった。目隠しを外すと、財前は穏やかな目をしとった。


「俺、謙也さんと、より戻そうと思います。許してもらえるかなん分からんけど、今度は俺から告白する」
「財前…」
「いつか離れ離れになってまうかもしれんけど、それまでは一緒におる、きっと今度は大丈夫や」
「……………そか」
「無理して忘れよう思うてたけど、ユウジ先輩のおかげで気付けた。本間おおきにっすわ」
「…おん」

財前は制服をキッチリ着て深呼吸を一回。腰を少し摩りながら体育倉庫を走って出て行った。残されたのは、無様な俺。

「何やっとんのかなぁ、俺は…」

財前が欲しくて欲しくて処女まで手放したのに(しかも相手は謙也)結局手に入らんかった。財前が依存しとったのは俺やなくて謙也。んで、財前に依存しとったんわ紛れも無く俺。今頃涙流しながら抱き合っとるんやろな。なんや俺キューピッドやん。はは、おもろない笑えんわ。

床を汚しとる財前のを指で掬って少しだけ舐めてみる。ん、苦い。当たり前やけど。…これさえも、謙也のものやんなぁ。


「…財前、好きや」
正直に言えばよかった。半ば犯すような真似をして、結局一番傷付いたのは自分。それにしても。あんな風に抱いたくせにキスだけは出来んかった自分が虚しかった。

幸せ、か。俺のおかげで今財前が幸せなら、お前が俺を一生忘れんなら。俺の思いも少しは報われるかもな。
なぁ財前、今日の俺の頑張りは忘れんでな。



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