3.不安を消したかったからで、





僕が君の手を、


握り返したのは、




不安を消したかったからで。












俺が光の涙を見たのはこれが二回目やった。

光は元々口数が多い方やなかったけど、最近さらになんも喋らへんくなった。この前、光が急に黙り込んでまったから手を握った。そしたら握り返してくれたから、ついつい可愛すぎて抱きしめたわけやけど。…ちょうどその辺りからやな。


相変わらず一緒に帰ってはいたんやけど、不安げな顔で相槌をうつ光に段々もやもやを感じとる自分がおった。そんでついに、言ってしもた。


「お前なぁ、ちゃんと思っとること言うてくれな分からへんで?最近光が何考えとるか理解してやれんくて、流石にちょぉきついときあんねんけど」



あんまりきつい口調で言うたつもりやなかってんけど、光はぼろぼろ泣き出してしまって。めちゃめちゃびっくりして、あたふたすることしか出来ん。


卒業式の日もよぉ泣いとったけど、それ以上にわんわん泣いて、泣きすぎてしゃくり上げるくらい泣いて、過呼吸みたいな感じになってきて。あたふたしとる場合ちゃうやろ!思って光を公園まで連れてってベンチ座らせて背中摩ってやった。


光があんまりにも苦しそうな顔しよるから胸が苦しくなった。ごめんな、光。光はいつも辛いこととかよぉ言えへんの、俺は知っとったはずやのに。光が中学入学したばっかのときやって、上級生からの嫌がらせを光は一人で耐えとった。
そんな光を一番に分かってやりたいって、俺はずっとそう思っとったんちゃうんか!




しばらく背中摩っとったら光の呼吸も大分落ち着いてきたから、ちょぉ飲み物買うてきたるな、ってベンチから立とうとしたら、手をぎゅっと握られた。光はなんか言いたいことあるみたいで「あー…」とか「うー…」とか言うて、また目を潤ませるから、安心させたくて手を強く強く握り返す。
光は形の良い唇をそっと動かす。




「…置いていかないでください」







卒業式の日、泣きながら言った言葉を光はまた言う。ずっとずっとずっと不安だったんか、光。俺はお前を分かっとる気になっとっただけで、実際は辛い思いさせとったんか。



「ごめん光、ごめんな。目ぇ腫れてまうからもう泣かんでや、な?」
光の泣き顔を見るのが苦しくて、ぎゅっと抱き寄せた。肩が光の涙で濡れる。


「なぁ光。置いてなんかいかんからさ、俺が速くて追い付けへんときはちゃんと言うてな」
「…っ、はい……!」
「それにこうしとれば大丈夫やろ?」


きつく繋いだ手を見た光がやっと笑ってくれてびっくりするほどの幸せを感じたんや。


濡れた肩さえ愛しくて、光の額にキスした。くちびるにするんは……あーなんや照れるわ。ち、チキン言うなや!俺は光が大事すぎんねん!
とりあえず、まだもうちょい先…かな?





お題提供:「確かに恋だった」さま
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