2.誰にも渡したくなかったからで、
僕が君の手を、
握り返したのは、
誰にも渡したくなかったからで。
高校に行っても謙也さんと俺は頻繁に会っとった。謙也さんは中学まで帰り迎えに来てくれたからや。俺、どんどん謙也さんにはまってる。
それでも、環境が変わっていくのは仕方の無いことで。
謙也さんは中学んときからよぉモテた。それに本人に自覚が無いのが余計に質が悪い。それと、キラキラしとるのは髪色だけやない。笑顔。綺麗すぎる笑顔。
それに引き換え、俺は相変わらず素直になれないまま。告白は俺からやった。それから謙也さんは毎日俺に気持ちを伝えてくれる(でも、キスは一回もしてくれたことない)。
あの日は謙也さんが欲しくて離れたくなくて必死ったから、俺は一生懸命思いの丈を謙也さんにぶつけられた。でもそれはその時だけで。今思うとあれは一瞬の奇跡みたいなもんやったな。
「光、好きやで」って言われたら「俺もです」って言うたらええだけやん。それが出来ない俺は、本間に阿保。
「なぁ、校門とこに金髪の高校生がおるで!」
「めっちゃかっこええ!」
クラスの女子がざわつく。やっぱ謙也さんはかっこええんよな……それは俺のんや。見るな、なんて言えない。胸がざわつく。
「謙也さんっ」
「おう光!お疲れさん!」
(待たせてすみませんでした、くらい言えや。俺の阿保)
その日はいつも以上に上手く話せへんかった。いや、上手く、というより話せへんかった。謙也さんがこんなにも話し掛けてくれとるのに。
「光、どないしたん?」
ついには立ち止まってしまった俺の手を軽くきゅってしてくれた。
それでも何も言えないから、その手をぎゅって握った。
「光?」
「………(謙也さん、俺言えへんけど本間は大好きなんです)」
「光、どした?」
「………(どんなかわええ女にも謙也さんのこと渡したくないんです)」
「…光?」
「………(でも俺なんかが隣にいてええのか不安で不安で)」
「………」
「………(けんやさん、)」
かばっ
「あーもう!!お前は本間にかわええなあ!」
「え…」
「いちいち可愛すぎんねん!俺、本間お前のこと好きやわ」
…なんや、謙也さんが能天気でよかった。この人は俺が悩んどること知らへんのやろなぁ。
でも、それでええねんな。いつも幸せそうに笑っとってくれればそれでええ。いや、それがええ。
珍しく「なぁ、もっとぎゅーってしてもええ?」なんて聞いてくるもんやから、「俺もしたいです」なんて素直に言えへん俺は、代わりに握っとる手をさらにぎゅーってしてやった。
本当はキスやってしたいのに、結局それは言えへんまま。せやから、それは叶わんまま。
お題提供:「確かに恋だった」さま
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