朝起きたら、
空も、空気も、何もかも。
真っ白な雪に、覆われていた。
「おー…初雪って綺麗だねえ…」
「おい、足元を見ろ。滑るぞ」
雲から降る真っ白な雪を目にし、感嘆の声を漏らす名前。空ばかりに目をやって足元に気を遣わない此奴に、オレは声をかけた。
雪が綺麗だ、というのはオレも理解出来る。
だが。
「やっぱり…雪ってネジに似てる…」
「…何度それを言えば、気が済むんだ?」
此奴曰く、雪はオレに似ているらしいが。何処が似ていると言うんだ。納得がいかない。
「だって、両方白いし…」
「それだけか」
「両方綺麗だし…」
「……」
いつもふわりと笑って、気が付けば何処かへ消えている。
いつでもマイペースで「緩い」お前の方が、随分と雪らしい。
そう言おうとはしたが。
「お前の方が雪に似て…おい」
「んー、雪だるま…作れるかな…」
人の話を聞け、馬鹿。こんな言葉さえも、此奴の穏やかな笑顔に吸い込まれてしまう。
このままではいつか、オレも此奴のふわふわとした頭に毒されてしまうのでは無いか。
案外それも悪くは無いが、やはり駄目だ。
そして、オレは溜息を吐き、言葉を紡ぐ。
「勝手にしろ」
「じゃあ、一緒に作ろう?」
「………」
「私一人じゃ作れないですお願いします」
「……分かった」
今日だけは、
こんなくだらない会話も、此奴の緩んだ笑顔も受け入れよう。