「どうしたん、あいつ」
「あいつってどいつですか」
「お前の彼女」
「ああ、そいつ」
朝の教室。座るや否や問いかけた俺に、アレンは少々てかめっちゃ機嫌悪そうに、ぶっきらぼうな声で答えた
「"普段言えないけど言ってみたい言葉を皆に言ってみようデイ"だそうです」
彼女は平生から人とは違う、なんというか天才肌要素を兼ね揃えた女だった。ここで特筆しておくべきことは、あくまで要素であるだけで彼女が決して天才ではないこと。昔の人は言った。天才とバカは紙一重、まさにその言葉を人間で表したのが彼女だ。
「ラビもなにか言われたんですか?」
「ああ、まあ」
「この泥棒猫」
「え、いや、俺あいつには手ェ出してねーさ、まだ」
「今のは僕が彼女に言われた言葉ですよ」
「へ」
「まだってことはいつか出すんですか楽しそうな計画だ」
「アレン、ちがっ…!腕の間接はそっちには曲がらなっ……!」
「ラビなら曲がると僕は信じてます」
「そんな信頼いらねーさ!」
冗談であることを30回くらい説明し、ようやく彼の怒りがおさまった。最近の若者が切れやすいという現象を、こんなあからさまに肌で感じられるとは思わなかった。アレンに見えぬよう、必死で涙を拭い腕をさすった。
「ちなみに神田は何だと思います?」
「ユウ?ユウも言われたんか」
「僕も偶然そこに居合わせましたんでね。指差しながら腹抱えて笑ってやりました」
「お前は……何でいつもユウに対して腹黒いんさ」
「それで、何だと思います?」
「あー……馬鹿につける薬はない……とか?」
「……」
途端にアレンの顔がクロス元帥にでも会ったかのような表情になった。
「……え、なに、何でそんなに驚いてんさ」
「驚きますよ。ラビって普段良い顔してるくせにそんなこと思ってたんですね神田にも教えてやろう」
「ちょ、おま、お前が聞いてきたんじゃねーか!」
「聞いただけで悪口言えなんて言ってません」
かーんだぁぁああとクラス中に響く声を出し始めたアレンの口を必死で抑え込んで、元いた席に引きずりながら座らせた。なんなのこいつ、なんなの?触れるものすべて傷つけたがる思春期なの?!
「ラビはどうだったんです?」
「俺はお前よりはるかに常識のある思春期さ」
「なんの話してんですか?あの馬鹿になんて言われたか聞いてるんです」
「ああそれ?えーと、」
「どうせラビのことだから歩くエロ公害とでも言われたんでしょう」
「お前俺のこと嫌いだろ?実は死ぬほど嫌いだろ?」
「ノーコメント」
「そんなこと言われるわけないだろ。ただおやめくださいお代官様って叫ばれただけでぶへっ!」
「なにやってんですか穢らわしい」
「いやお前がなにやってんだよ」
「近寄らないでください歩く環境問題」
「やたらグローバルだな!」
僕の彼女は自意識過剰
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