「別れましょう」
ささやかな復讐。
うん、確か初めはそんな軽い気持ちから口にした言葉だった。だから断じて彼女が自分を本当に好きか不安とか、彼女の気持ちが見えなくて本心を知りたいだとか。そんな浮わついたものではない。断じて。
「えー、なんで?」
「なんでって……僕ら全然噛み合わないじゃないですか」
「そう?」
「言葉も通じないし」
「アレン日本語喋れるじゃない」
「そうじゃなくて」
なんていうか、話が噛み合わないというか、心の言葉が通じないというか
うまく説明できないけど。
そう真剣に伝えれば、彼女の表情もみるみるうちに真剣に、それから少し悲しそうに歪んだ。
やっと伝わった。君もこれで少しは僕の有り難みを分かればいいんだ。いつもいつもいつも、雑に扱われるだけで我慢し続けるなんて。そんなの僕の性分に合わない。
勝ち誇った笑みをポーカーフェイスで隠したまま彼女を見れば、相変わらず項垂れたまま何かに悩んでる様子だ。
「まあ、僕も鬼じゃありませんからね」
「……」
「君の態度次第では別れないこともありませんよ」
「アレン」
「何ですか?」
「さっき心の言葉が通じないって言ったよね」
「ええ、それが何か?」
「心臓は喋んないよ」
伝わんねぇ
僕の彼女は自意識過剰
(あとさ、アレンが鬼じゃないなんて当たり前じゃない。君は人間だよ?)
(さっきから真面目な顔して悩んでると思えば……そんな話ですか)
(知らないなんて可哀想な子だなと思って)
(君にだけは言われたくありません)