『嘘だ。』
「いや、そんなこと言われても。」
『絶対騙されないんだからね、日本人馬鹿にすんな!』
「いや、してないさ。」
『してるでしょ、猿って思ってんでしょ!?日本人で猿は豊臣秀吉しかいないのよ!?そんなことも知らないなんてまったくアンは……』
「俺の名前はラビ!」
何回目かさえも、もう忘れたくなるような応酬の連続にさすがにゲッソリした。彼女がここに来て1週間、未だに顔を会わせればこのやりとりばかりだ。
『だってお母さんが赤毛のアンの話良くしてくれたもの。私、あなたのこと良く知ってるよ、アン。』
「だからそれ俺じゃないんだってば!俺の名前はラビなの!そもそも性別チゲーじゃんか。」
『アンの性別なんて知らなかったもの。そう言えば男だったかも。』
「かも、ってそんな!それに赤毛なんて世の中たくさんいるだろ!」
『私が会った赤毛は貴方が初めてだよ。だからやっぱり貴方がアンなんだよ!』
「決めないで、ねえ、勝手に決めないで!」
名前なんて執着してなかったはずなのに…。彼女に会ったときから俺の中の価値観が狂い始めた。
NAME
(俺の49番目名前はラビ、ラビなんさ)
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