「やあ、兎さん。そんなに急いでどこ行くの?」


「……お前何言ってんさ?」



なんとなーく食堂にでも行ってみようかとだらだら廊下を歩いていたら声をかけられた。
彼女は同じエクソシストの仲間。俺の経験と付き合いから言うととてつもなく変な女である。



「………俺兎じゃないし急いでもないんですけど……」


「ど、こ、い、く、の!」


「食堂です」

「よし、案内せい!」

「何でだよ!つーかお前だって食堂の場所くらい分かんだろ!」


「違うよ。私が行きたいのは不思議の国だよ。食堂なんてさらさら興味ないね」


「俺食堂行くって言ったさ?」

「はあ?お前兎だろ?不思議の国つれてけや」

「無茶言うなよ」



なんとなく嫌なやつに捕まってしまった。俺の直感がめんどくさいことに巻き込まれることを予期している。



「何、アリスにでもはまってんの?」

「ご名答!今日はアリス気分で行こうと思って」

「(傍迷惑な)」

「ラビは兎っぽいから兎ね。喜べ!重役だぞ!」

「じゃあお前はアリスなん?」

「うん」

「嘘だろ、ハートの女王の方が似合ってるさ」

「死ね、兎」



アリスはそんなこと言わない。俺こいつにだけは追いかけられたくない。
本気でそう思った。こいつに追いかけれなんかしたら、それこそ生死を賭けた追いかけっこになりかねない。冗談じゃない。



「大体さ、原作は生ぬるいのよ」

「童話に生ぬるいも何もないだろ」

「私がアリスだっら女王とタッグ組んで近隣支配……いや、世界征服するね!」


「どんだけ欲深いアリスだよ!」

「そして女帝として崇められるの」

「お前がアリスじゃなくて本当に良かったと思うさ」

















もしもきみが……


(さあ、不思議の国へ行け!)

(だから無茶言うな!)

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