「おかえりなさいませご主人様」

「……」

「おかえりなさいませ」

「今日は地球最後の日か?」

「なんでよ」



表情を変えずに、しかし微かに不機嫌そうな声色で女は言った。平生ぶっちょう面がよく似合う彼女は必要以上に自分のことを話さない。それ以前に人とのコミュニケーションが異常なほど苦手だ。彼女が好きなものと言えば一人の時間とギャンブルとそれから酒だ。あれ、どこのオヤジ?



「お風呂にしますかご飯にしますかそれとも天に召されますか」

「一番最後明らかにおかしいだろ」

「だってメイドですもの」

「俺の中のメイドとお前の中のメイドが噛み合わないんだけど何で?」



黒を基調としたメイド服に猫耳の彼女はニヤリと嫌な笑みを見せた。なにそれ怖い。



「そんなことよりコスプレなんて趣味あったのか」

「…負けたの」

「は?」

「賭けに負けたの。その罰ゲームだよ」

「嘘だろ」

「負けることくらいあるよ。私だって人間だもん」

「嘘だろ?!」

「喧嘩売ってんの?」

「いやだって3度の飯よりギャンブル好きのお前だよ?負かして身ぐるみ剥ぐことはあっても負かされてメイド服は着ないだろ」

「人聞き悪いわね。身ぐるみなんて剥がないよ、持ち物質屋に入れるだけで」

「どっちにしろタチ悪いから」



そんな俺の言葉を聞いているのかいないのか、彼女は俺の頬を引っ張って言った。



「そんなわけで今日から貴方のメイドになりますから。感謝しろよ」

「いひゃいから。お前すでにメイドやる気ないじゃん。つーか今素晴らしく恐ろしい言葉が聞こえたけど、何?今日、から?」

「ひれ伏せ愚民め」

「お前は何がしたいんだ」








ティキさんとメイド

(ご主人様、ばっちいから近づかないでください消えろボケ)

(根本的に何か違うことに気づこうぜ)








 





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