衝撃





「赤司君、おはようございます」

「誰かな、こんなところに小学生を招き入れたのは」

「小学生って!ご自分の身長見てから言ってくださいよ!私が小学生だったら赤司くんは何なんですか、ミジンコですか!」

「黒子か。何故体育館に入ることを許可した。元いたところに返してきなさい」

「小学生の次は犬扱いですか。勘弁してくださいよ、黄瀬君じゃあるまいし!」

「これ以上犬は飼えないと言っているだろう。我が部には黄瀬がいるじゃないか」

「赤司君、小町さん、黄瀬君が泣いてます」


だから何?とでも言うように2人が不思議そうな顔をしたのと黄瀬君が涙を垂れ流しながら体育館を走り去るのはほぼ同時だった。


「書類を届けに来たんです。先生が赤司くんに渡してほしいと言っていた重要書類を、この私が、雨の中、直々に、届けに来たんですよ」

「…それいつ貰ったんだい」

「1週間前ですが何か?」

「提出期限は?」

「今日までですが何か?」

「お前はもっと悪びれろ」

「だからこうして朝一で渡しに来たんじゃないですか」


感謝してくださいよ
そう言うや否や、彼女はずぶ濡れの鞄から1枚のプリントを取り出した。


「なにこの汚物」

「おや、赤司君はご存じないようですね。プリントといいます」

「そうじゃなくて、なんでこんなにグッシャグシャなの」

「世間の荒波に揉まれたんです。世知辛い世の中ですからね」

「お前は1週間どこで何をしてきたんだ」

「私の1週間をお知りになりたいと。朝から、晩までの、私の1週間を」

「全員集まったな、練習を始めるぞ」


清々しいほどの無視を決め込んだ赤司君は、彼女を振り返ることもせずに先頭を走り始めた。どうやら今日の練習は走り込みからに変更されたらしい。

走ってる最中にも赤司君が彼女の近くを通るたびに、言い合う声が最後尾の僕の位置からでも聞こえた。それを聞きながらいつの間にか長いトイレから戻ってきた目が赤い黄瀬君は、呆れたように笑う。


「ほんと小町っちはめげないっすね」

「そうですね」

「諦めることを知らないっていうか、一途っていうか」

「そうですね」

「好きな子にちょっかいかけちゃうなんて小学生みたいっすね」

「そうですね」

「赤司っちも早く素直になればいいのに」

「そうです…え?」

「え?」








衝撃

(え?あの2人って…)

(両想いっしょ?気づいてないの本人だけかと思ってた)















20130303




 


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